裴拙庶子に答える書答裴拙庶子書
1雀には病が多く、鶴は遠くから来た
某遠離海島。旅宦江皐。比者暫願退居。稍期肄業。來投樂國。冀濟窮塗。本望少贍山資。便諧谷隱。伏蒙太尉念以雀有多病。鶴自遠來。特署職名。俾趨恩化。尋緣狂花有失。腐芥無依。轉知山鹿野麋。唯宜退縮。永謂鴻儔鵠侶。不合攀瞻。況乃器比斗筲之人。身隨刀筆之吏。旅舍旣拘於雉堞。閒門可設其雀羅。自前年伏承庶子暫阻朝天。偶來避地。便欲托金牌之幸會。敍玉季之奬憐。專候起居。願搜誠懇。蓋慮迹賤而動多悔吝。才微而易見棄捐。強自微攀舊恩。是爲玷浼淸德。以此跧藏形影。綿歷歲時。雖知提帚有門。唯恐負荊無路。豈料庶子恕以未陳禰刺。先降劉牋。閱温言而楚纊覆身。捧華翰而隋珠耀掌。兼蒙賢弟起居未移曩顧。遠賜榮緘。不遺異域之人。特辱同年之字。金膏珠粉。旣垂摩拂之恩。驥尾龍髥。重有依攀之望。莫不駑駘長價。瓴甋生光。不唯誇衒於親朋。實所輝榮於遠俗。謹當占筮撰日。齋沐拜塵。隳肝而盡瀝卑誠。擢髮而少逃厚責。其他所奉尊旨。謹具別狀啓陳云云。
某は遠く海の島を離れて、江の皐で旅の宦えをしていましたが、近ごろしばらく退いて居ることを願い、やや業を肄うことを期して、楽しい国に来て身を投じ、窮まった塗を済うことを冀いました。もとよりの望みは、山に入る資を少し贍かにして、すぐに谷の隠れにかなうことでした。伏して太尉が、雀には病が多く、鶴はみずから遠くから来たと念われて、特に職の名に署して、恩の化に趨らせてくださいました。ところがほどなく、狂った花が失うところがあり、腐れた芥が依るところもなく、山の鹿、野の麋は、ただ退き縮むのがふさわしいといよいよ知り、永く鴻の儔、鵠の侶は、攀り瞻ることに合わないと思いました。まして器は斗や筲の人に比べ、身は刀と筆の吏に随って、旅の舎はすでに雉の堞に拘われ、閑かな門には雀の羅を設けうるほどです。前の年から、庶子が、しばらく天に朝することを阻まれ、たまたま来て地を避けておられると承って、すぐにも金の牌の幸いな会に託して、玉のような季どのの奬め憐れみを敍べたいと思い、もっぱら起居を候って、誠の懇ろを搜すことを願いました。しかし、跡が賤しくて動けば悔いと吝みが多く、才が微かで棄て捐てられやすいことを慮って、強いて旧い恩に少し攀ることは、清い徳を玷し浼すことだとして、こうして形と影を跧め蔵すうちに、歳と時が綿々と歴ました。帚を提げる門のあることは知りながら、ただ荊を負う路のないことを恐れていたのです。どうして庶子が、まだ禰衡の刺を陳べていないことを恕され、先に劉の牋を降されるとは思ったでしょう。温かな言を閲すれば楚の纊が身を覆い、華やかな翰を捧げれば隋の珠が掌に耀きます。あわせて賢い弟どのの起居も、昔の顧みを移さず、遠く栄えある緘を賜って、異域の人を遺てず、特に同年の字を辱められました。金の膏、珠の粉は、すでに摩り拂う恩を垂れ、驥の尾、竜の髥には、重ねて依り攀る望みがあります。駑や駘が価を長くし、瓴や甋が光を生じないことはありません。親しい朋に誇り衒うだけでなく、まことに遠い俗において輝く栄えとなるところです。謹んで、占い筮って日を撰び、斎し沐して塵に拝し、肝を隳いて卑しい誠を尽く瀝ぎ、髪を擢いて厚い責めを少しでも逃れましょう。そのほか奉った尊い旨については、謹んで別に状を具えて啓し陳べます。云々。