提督が開城府へ軍を戻した事を申し上げる提督還軍開城府狀
昨日提督欲還開城府少休人馬臣與李德馨等多般懇陳大兵一退民心解散之意反覆論辨最後提督發怒曰吾不過欲休兵更進豈有退歸之意爾等何不曉事而煩說如此耶仍爲停行初昏招通事辟左右密語進取之計甚悉且日正月吾本命對衝不吉故落馬又不利於擊賊必須於來月可以進兵傳語陪臣但自知之勿泄於人今日朝以戰馬多死親自設祭適天氣微陰提督言天雨則當退駐開城臣更進請少駐而終不聽只留南兵炮手於江邊馬軍則盡還開城府極爲悶痛大抵提督於二十七日獨引家丁經進不利因此退駐東坡而諸將中如張世爵者尤主退駐之說今又自東坡更退開城府雖云休兵更進而其言亦難料其必然糧料之事臣前已狀。啓當初只備一路一二日之需今大兵留開城者四日留坡州者二日又留東坡者三日顚倒追隨彼此不及罔知所措賊兵尙留京城若大兵從此遽退大事將去臣扣心號天欲死無地更欲極力懇乞未知聽從與否而提督攻城取勝全用南軍及其論功之際北兵居上以此軍情似爲乖張若但以一勝爲功無必進之意則臣等區區才力勢難挽回尤爲痛悶
昨日、提督が開城府へ戻って人馬を少し休ませようとしましたので、臣は李徳馨らと幾様にも懇ろに申し述べ、大軍がひとたび退けば民心が散り解けるという意を繰り返し論じ弁じました。ついに提督は怒って、「わたしは兵を休めて再び進もうとするだけで、どうして退き帰る意があろうか。お前たちはどうして事を解さずにこのように煩わしく言うのか」と申し、そのまま発つのを止めました。
宵の口に通事を呼び、左右を退けて、進んで取る計策をはなはだ詳しく密かに語りました。また、「正月はわたしの本命と衝き当たって吉くないゆえに馬から落ち、また敵を撃つのに利がなかった。必ず来月になってこそ兵を進めることができる。この国の臣に伝えて、ただ自分たちだけが知り、人に漏らさぬようにせよ」と申しました。
今日の朝は戦馬が多く死んだといって、みずから祭を設けました。たまたま空が少し曇ると、提督は「雨が降れば、まさに開城へ退いて駐まろう」と申しました。臣が再び進んで、少しだけ留まることを請いましたが、ついに聞かず、ただ南兵の砲手だけを川辺に置き、騎兵はみな開城府へ帰らせましたので、はなはだ悩ましく痛ましく存じます。
おおよそ提督は二十七日に独り家丁だけを率いて軽々しく進み、勝てずに、これによって東坡へ退き駐まり、諸将のうち張世爵のような者がいっそう退き駐まる説を主張しました。今また東坡から再び開城府へ退きますので、兵を休めて再び進むと申しても、その言葉が必ずそのとおりになるとは計りがたいのです。
糧の事は臣が先にすでに状啓で申し上げました。初めはただ一筋の路の一、二日分だけを備えましたのに、今、大軍が開城に留まったのが四日、坡州に留まったのが二日、また東坡に留まったのが三日で、転び倒れながら追い従っても、あちらこちら及ばず、為す術を知りません。
敵兵がまだ京城に留まっておりますのに、もし大軍がこれからにわかに退けば、大事は誤られるでしょう。臣は胸を叩き天に叫んで、死もうとしても死ぬ地がありません。改めて力を尽くして懇ろに乞おうと思いますが、聞き入れられるかどうかわかりません。
提督が城を攻めて勝ったときにはもっぱら南兵を用いたのに、功を論ずる折には北兵が上にありますから、これによって軍情が食い違ったように思われます。もしひとたび勝ったことだけを功とし、必ず進もうという意がないのであれば、臣らのわずかな才と力では形勢上引き戻しがたく、いっそう痛ましく悩ましく存じます。
夾注 2
二月三日
二月三日。
底本は南軍であるが、同じ編の南兵と同じものであるから「南兵」に揃えた。 ― 訳者