いにしえの文 › 懲毖録(過ちを懲らし後の憂いを慎む記録) › 巻15 軍門謄錄

平安道の巡察使に送った文移平安道巡察使文

懲毖録(過ちを懲らし後の憂いを慎む記録) 懲毖錄 · 柳成龍(リュ・ソンリョン) · 1633年刊行(壬辰倭乱の後に著す) · 段落 1 · 漢字 233字 · 朗読 1.9分

懲毖録(過ちを懲らし後の憂いを慎む記録) 巻15 軍門謄錄 壬辰倭乱が終わった後、領議政の柳成龍が自らの目で見たものを記して残した記録。「過ぎたことを懲らして後の憂いを慎む」という意で名を付けた。戦争がどのように始まり、朝廷が何を見落としたかを言い逃れなく記した。李舜臣を推挙したこと、明の軍とのいざこざ、民が経た惨状がそのまま収められている。

一道軍數常時現付軍額者通計一萬餘名若合戶奉足則其數必倍今則合公私賤雜流抄發而其數止此未知其故雖兵以務精爲言然太少則恐不足以禦大勢之寇此未必抄軍無法互相脫漏之弊更加詳察施行老乙可赤形勢浸浸日盛將來之禍可以料度凡事爲之於未甚之前則其勢易爲之於旣甚之後則其勢難乘此氷解防歇之時江邊鎭堡城子之頹圯者修之烟墩之可築者築之糧餉之不足者補之兵器之未備者備之邊將之庸殘者汰之先爲不可勝以待賊之可勝則後雖有事變有不足患遠處指授之事但擧大槪不能詳言本道責勵兵使及邊將至誠曉諭期以同濟國難

一道の軍の数を、平時に帳簿に載った軍額で通して数えれば一万余名である。もし戸と奉足を合わせれば、その数は必ず倍になる。今は公賤と私賤に雑流まで合わせて抜き出したのに、その数がここに止まるので、その理由が分からない。兵は精しさに努めよと言うとはいえ、あまりに少なければ大きな勢いの寇を防ぐに足らないのではないかと恐れる。これは必ず兵を抜くのに法がなく、互いに漏れ落ちる弊があるのだから、あらためて詳しく調べて施行せよ。

老乙可赤の勢いが次第に日ごとに盛んなので、将来の禍を計るに足る。およそ事は甚だしくなる前に行えばその勢いが易しく、すでに甚だしくなった後に行えばその勢いが難しい。この氷が解けて守りの番が休む時に乗じて、江辺の鎭堡の城の崩れたものは修め、烟墩を築くに足る所は築き、軍糧の足りないものは補い、兵器の備わらないものは備え、邊將の愚かで弱い者は退けよ。まず賊が自分に勝てない構えを作っておいて、賊に勝てる時を待てば、後にたとえ事変があっても憂えるに足らない。

遠い所から指示する事なので、ただ大きな筋だけを挙げて詳しくは言えない。本道は兵使と邊將を励まし、至誠をもって諭して、共に国の難を越えることを期せよ。

夾注 1

「老乙可赤」は、建州女眞のヌルハチを漢字の音で写したものである。