天理篇
1天に順えば残る
孟子曰:「順天者存,逆天者亡。」
孟子が言った。「天に順(したが)う者は残り、天に逆らう者は滅びる。」
2天理に循えば利がある
《近思錄》雲:「循天理,則不求利而自無不利。循人欲,則求利未得而害已隨之。」
『近思録』に言う。「天理に循(したが)えば、利を求めなくても自然に利でないことがない。人の欲に循えば、利を求めて得られないうちに害がすでに従ってくる。」
3事は人が、成すのは天が
諸葛武侯曰:「謀事在人,成事在天。」
諸葛武侯が言った。「事を謀るのは人にあり、事を成すのは天にある。」
4人の願いと天の理
人願如此如此,天理未然未然。
人はこうあってほしいこうあってほしいと願うが、天の理はまだそうならずそうならない。
5天は人の心にある
康節邵先生曰:「天聽寂無音,蒼蒼何處尋?非高亦非遠,都只在人心。」
康節邵先生が言った。「天の聴(きこ)しめすところは静まって音がない。蒼々とした、どこに尋ねようか。高くもなく遠くもなく、すべてただ人の心にある。」
6一つの念を天地が皆知る
人心生一念,天地悉皆知。善惡若無報,乾坤必有私。
人の心が一つの念(おもい)を起こせば、天地はことごとくみな知る。善悪に報いがないのなら、天地には必ず私(わたくし)があることになろう。
7ささやき声も天には雷
玄帝垂訓:「人間私語,天聞若雷。暗室虧心,神目如電。」
玄帝が訓(おしえ)を垂れた。「人の世のささやき声も、天が聞くには雷のようであり、暗い部屋で心に背いても、神の目には電(いなずま)のようである。」
8心を欺けば天を欺く
《忠孝略》曰:「欺人必自欺其心,欺其心必自欺其天。心其可欺乎?」
『忠孝略』に言う。「人を欺けば必ず自分の心を欺くことになり、自分の心を欺けば必ず天を欺くことになる。心をどうして欺けようか。」
9天は欺けない
人可欺,天不可欺。人可瞞,天不可瞞。
人は欺けても天は欺けない。人はごまかせても天はごまかせない。
10天は軒先にある
世人要瞞人,明明把心欺。欺心即欺天,莫道天不知。天在屋簷頭,須有聽得時。你道不聽得,古今放過誰?
世の人が人をごまかそうとすれば、まずはっきりと自分の心を欺く。心を欺くことがすなわち天を欺くことであるから、天が知らないと言うな。天は屋根の軒先にあって、必ず聞きつける時がある。おまえは聞こえていないと言うが、昔から今まで誰を見逃したことがあったか。
11思いを起こす前に先に知る
湛湛青天不可欺,未曾舉意我先知。勸君莫作虧心事,古往今來放過誰?!
澄みきった青い天は欺けない。まだ思いを起こさないうちに私が先に知る、と言われる。君に勧める、心に背く事をするな。昔から今まで誰を見逃したことがあったか。
12人は欺けても天は欺けない
人善人欺天不欺,人惡人怕天不怕。
人が善ければ人は侮っても天は侮らず、人が悪ければ人は恐れても天は恐れない。
13天は誤らない
人心惡,天不錯。
人の心が悪くても、天は誤らない。
14天は裏切らない
皇天不負道心人,皇天不負孝心人,皇天不負好心人,皇天不負善心人。
天は道を守る心を裏切らず、天は孝の心を裏切らず、天は善(よ)い心を裏切らず、天は善(ぜん)なる心を裏切らない。
15悪が満ちれば
《益智書》雲:「惡錯若滿,天必戮之。」
『益智書』に言う。「悪の器が満ちれば、天が必ずこれを戮(ころ)す。」
夾注 1
底本は「惡錯」であるが、二字めを器を意味する字の誤りと見て「悪の器」と読んだ。——訳者
16天が必ず誅する
莊子曰:「若人作不善得顯名者,人不害,天必誅之。」
荘子が言った。「ある人が善くない事をして、しかも名を顕(あら)わし得たならば、人が害さなくても天が必ずこれを誅(ちゅう)する。」
17瓜を植えれば瓜が生える
種瓜得瓜,種豆得豆。天網恢恢,疏失。
瓜を植えれば瓜を得、豆を植えれば豆を得る。天の網は広く広く、粗いようでも漏らさない。
夾注 1
底本は「疏失」であるが、通行本の「疏而不失(粗いようでも漏らさない)」に従って読んだ。——訳者
18自分の利のために人を損なえば
深耕淺種,尚有天災;利己損人,豈無果報?
深く耕して浅く植えても、なお天の災いがある。自分を利して人を損なえば、どうして果報がないことがあろうか。
19天に罪を得れば
子曰:「獲罪於天,無所禱也。」
孔子が言った。「天に罪を得れば、祈る所がない。」
20理由のない災いはない
先儒曰:「非災橫禍,世人常嘆無因。分付安排,皇天必自有說。」
昔の儒者が言った。「思いがけない災いや横禍(おうか)を、世の人はいつも理由がないと嘆くが、割り当て按排するところに、天は必ず自ら言うべきことがある。」
21顔回と曹操
若無後來報應,造物何以謝顏回?除卻永劫災殃,上帝胡私私曹操?
後の世の報いがないのなら、造物主は何によって顔回に謝そうか。永劫の災いを除いておかなかったのなら、上帝はどうして曹操だけに私(わたくし)しようか。