省心篇
1冥の法は遅くても漏れない
《資世通訓》:「陰法遲而不漏,陽憲速而有。」
『資世通訓』にいう。「冥(あの世)の法は遅いが漏れがなく、この世の憲(おきて)は速いが漏らすことがある。」
夾注 1
底本は「速而有」で終わり、「漏らす」に当たる字が落ちていると見て補って読んだ。――訳者
2この世の網と冥の網
陽網疏而易漏,陰網密而難。
この世の網は粗くて漏れやすく、冥の網は密で抜け出しがたい。
夾注 1
底本は「密而難」で終わり、「抜け出す」に当たる字が落ちていると見て補って読んだ。――訳者
3瑕のない玉、孝弟の子
《景行錄》曰:「無瑕之玉,可為國瑞。孝弟之子,可為家寶。」
『景行録』にいう。「瑕のない玉は国の瑞となることができ、孝で弟(てい)な子は家の宝となることができる。」
4宝や財貨は使えば尽きる
寶貨用之有盡,忠孝享之無窮。
宝や財貨は使えば尽きるが、忠と孝は享けても尽きることがない。
5家が和やかなら貧しさもよい
家和貧也好,不義富如何?但存一子孝,何用子孫多?
家が和やかなら貧しくてもよい、義でなくて富んだところで何になろう。ただ孝の子が一人いればよい、子孫が多くて何の用があろう。
6父の憂いを解くのは子の孝
父不憂心因子孝,夫無煩惱是妻賢。言多語失皆因酒,義斷親疏只為錢。
父が心を憂えないのは子が孝だからであり、夫に煩悩がないのは妻が賢いからである。言葉が多くて失言するのはみな酒のせいであり、義が断たれ親しさが疎くなるのはただ金のせいである。
7並でない楽しみを得たなら
既取非常樂,須防不測憂。
すでに並でない楽しみを得たなら、思いがけない憂いを防いでおくべきだ。
8楽しみが極まれば悲しみが生じる
樂極悲生。
楽しみが極まれば悲しみが生じる。
9寵を受けたら辱めを思え
得寵思辱,居安慮危。
寵を得たら辱めを思い、安らかに居たら危うさを慮れ。
10栄えが深ければ
榮深辱淺,利重害深。
栄えが深ければ辱めも浅くなく、利が重ければ害も深い。
11盛んな名には重い責め
盛名必有重責,大功必有奇勳。
盛んな名には必ず重い責めがあり、大きな功には必ず並でない働きがある。
12はなはだ愛しめばはなはだ費える
甚愛必甚費,甚譽必甚毀。甚喜必甚憂,甚贓物必甚亡。
はなはだ愛しめば必ずはなはだ費え、はなはだ褒められた後には必ずはなはだ譏られる。はなはだ喜べば必ずはなはだ憂え、はなはだ蓄えれば必ずはなはだ失う。
夾注 1
底本は「甚贓物」であるが、蓄える意の字の誤りと見て「はなはだ蓄えれば」と読んだ。――訳者
13好い事もないほうがまし
恩愛生煩惱,追隨大丈夫。庭前生瑞草,好事不如無。
恩愛が煩悩を生んで、大丈夫につきまとう。庭の前に瑞草が生えるような好い事も、ないほうがましだ。
14高い山を見なければ
子曰:「不觀高山,何以知顛墜之患?不臨深淵,何以知沒溺之患?不觀巨海,何以知風波之患?」
孔子がいった。「高い山を見なければ、どうして転げ落ちる患いを知ろうか。深い淵に臨まなければ、どうして溺れ沈む患いを知ろうか。大きな海を見なければ、どうして風波の患いを知ろうか。」
15高い山に登らなければ
荀子曰:「不登高山,不知天之高也;不臨深溪,不知地之厚也;不聞先王之遺言,不知學問之大也。」
荀子がいった。「高い山に登らなければ天の高さを知らず、深い谷に臨まなければ地の厚さを知らず、先王の遺した言葉を聞かなければ学問の大きさを知らない。」
16古を推して今を験す
《素書》雲:「推古驗今,所以不惑。」
『素書』にいう。「古を推して今を験すから、惑わないのである。」
17未来を知るなら過去を察せよ
欲知未來,先察已往。
未来を知ろうと思うなら、まず過ぎたことを察せよ。
18鏡で古を映す
子曰:「明鏡可以察形,鑑古可以知今。」
孔子がいった。「明らかな鏡では形を察することができ、古を鑑とすれば今を知ることができる。」
19過去は鏡、未来は漆
過去事明如鏡,未來事暗似漆。
過ぎた事は鏡のように明らかで、来る事は漆のように暗い。
20明朝の事は決められない
《景行錄》雲:「明旦之事,薄暮不可必。薄暮之事,哺時不可必。」
『景行録』にいう。「明朝の事を今日の夕暮れに決めることはできず、夕暮れの事を昼のうちに決めることはできない。」
21天には測れない風と雲
天有不測風雲,人有旦夕禍福。
天には測れない風と雲があり、人には朝夕にふりかかる禍と福がある。
22三尺の土に帰る前には
未歸三尺土,難保百年身。既歸三尺土,難保百年墳。
三尺の土に帰る前には百年の身を保ちがたく、三尺の土に帰った後には百年の墳を保ちがたい。
23人であるのは難しい
巧厭多勞拙厭閒,善嫌懦弱惡嫌頑。富遭邪妬貧遭辱,勤曰貪婪儉。觸目不分皆笑蠢,見機而作又言姦。思量那件當教做,為人難做人難。寫得紙盡筆頭幹,更寫幾句為人難。
巧みであれば労が多いと嫌われ、拙ければ暇だと嫌われる。善ければ懦弱だと謗られ、悪ければ頑だと謗られる。富めば邪な妬みに遭い、貧しければ辱めに遭う。勤めれば貪婪だといわれ、倹しければ吝嗇だといわれる。目の前の事を見分けられなければみな愚かだと笑われ、機を見て動けばまた姦だといわれる。よく思い量ってみよ、どれをせよというのか。人であるのは難しく、人をするのは難しい。紙が尽き筆の先が乾くまで書いても、さらに幾句か書く――人であるのは難しい。
夾注 1
底本は「儉」で終わり、「吝嗇だ」に当たる字が落ちていると見て補って読んだ。――訳者
24道を聞いた三通り
老子曰:「上士聞道,謹而行之;中士聞道,若存若亡;下士聞道,大笑之不笑。」
老子がいった。「上の士は道を聞けば慎んで行い、中の士は道を聞けば保つようで失うようであり、下の士は道を聞けば大いに笑う――笑わなければ道というほどのものでもない。」
夾注 1
底本は「不笑」で終わり、後に字が落ちていると見て「笑わなければ道というほどのものでもない」と補って読んだ。――訳者
25朝に道を聞けば
子曰:「朝聞道,夕死可矣。」
孔子がいった。「朝に道を聞けば、夕に死んでもよい。」
26養うところがなければならない
《景行錄》曰:「木有所養,則根本固而枝葉茂,梁棟之材成。水有所養,則源泉壯而流脈長,灌溉之利博。人有所養,則志氣大而識見明,忠義之士出。可不養哉!」
『景行録』にいう。「木に養うところがあれば、根本が固く枝葉が茂って、梁や棟の材が成る。水に養うところがあれば、源泉が壮んで流れの脈が長く、灌ぎ漑ぐ利が広い。人に養うところがあれば、志気が大きく識見が明らかで、忠義の士が出る。養わずにいられようか。」
27鏡は顔を、知は心を
《直言訣》曰:「鏡以照面,智以照心。鏡明則塵埃不染,智明則邪惡不生。人之無道也,如車無輪,不可駕也。人而無道,不可行也。」
『直言訣』にいう。「鏡で顔を照らし、知で心を照らす。鏡が明らかなら塵埃に染まらず、知が明らかなら邪悪が生じない。人に道がないのは、車に輪がないようなもので、駆ることができない。人であって道がなければ、行くことができないのである。」
28自らを信じれば呉越も兄弟
《景行錄》雲:「自信者,人亦信之,吳越皆兄弟;自疑者,人亦疑之,身外皆敵國。」
『景行録』にいう。「自らを信じる者は人もまた信じてくれるので、呉や越の人もみな兄弟である。自らを疑う者は人もまた疑うので、自分の身の外はみな敵国である。」
29意が合えば
《左傳》曰:「意合則吳越相親,意不合則骨肉為仇敵。」
『左伝』にいう。「意が合えば呉と越の人も互いに親しみ、意が合わなければ骨肉も仇敵となる。」
30自らを疑う者
《素書》雲:「自疑不信人,自信不疑人。」
『素書』にいう。「自らを疑う者は人を信じず、自らを信じる者は人を疑わない。」
31疑わしければ用いるな
疑人莫用,用人莫疑。
人が疑わしければ用いるな、人を用いたら疑うな。
32物が極まれば反る
《論語》雲:「物極則反,樂極則憂。大合必離,勢盛必衰。」
『論語』にいう。「物が極まれば反り、楽しみが極まれば憂いが来る。大きく合えば必ず離れ、勢いが盛んであれば必ず衰える。」
33否が極まれば泰が来る
物極則反,否極泰來。
物が極まれば反り、否が極まれば泰が来る。
34安らかなときに危うさを忘れるな
《家語》雲:「安不可忘危,治不可忘亂。」
『家語』にいう。「安らかなときに危うさを忘れてはならず、治まっているときに乱れを忘れてはならない。」
35乱れる前に治めよ
《書》雲:「致治於未亂,保邦於未危,預防其患也。」
『書経』にいう。「まだ乱れないうちに治まりを致し、まだ危うくないうちに邦を保ち、その患いを予め防ぐのである。」
36咫尺の人の心が量れない
《諷諫》雲:「水底魚,天邊雁,高可射兮低可釣。惟有人心咫尺間,咫尺人心不可料。」
『諷諫』にいう。「水底の魚、天辺の雁、高くても射ることができ低くても釣ることができる。ただ人の心だけは咫尺の間にあっても、その咫尺の人の心は推し量ることができない。」
37天は度れても人の心は
天可度而地可量,惟有人心不可防。
天は度ることができ地は量ることができるが、ただ人の心だけは防ぐことができない。
38皮は描けても骨は描けない
畫虎畫皮難畫骨,知人知面不知心。
虎を描いても皮は描けるが骨は描きがたく、人を知っても顔は知れるが心は知れない。
39向かい合って語っても心は千山の彼方
對面與語,心隔千山。
顔を向かい合わせて語っても、心は千の山を隔てている。
40海は枯れれば底が見えるが
海枯終見底,人死不知心。
海は枯れればついに底が見えるが、人は死んでもその心は知れない。
41人は見かけで判じられない
太公曰:「凡人不可貌相,海水不可鬥量。」
太公がいった。「およそ人は見かけで判じることはできず、海の水は枡で量ることはできない。」
42怨みを結ぶな
勸君莫結冤,冤深難解結。一日結成冤,千日解不徹。若將恩報冤,如湯去潑雪。若將冤報冤,如狼重見蠍。我見結冤人,盡被冤磨。
あなたに勧める、怨みを結ぶな。怨みが深ければ結び目を解きがたい。一日で結んだ怨みは、千日かけても解き切れない。もし恩で怨みに報いるなら、熱い湯を雪に注ぐようなものだ。もし怨みで怨みに報いるなら、狼がまた蠍に出会うようなものだ。私の見るところ、怨みを結んだ人はみな怨みに磨り削られてしまう。
43怨みを結ぶのは禍を種えること
《景行錄》雲:「結冤於人,謂之種禍。舍善不為,謂之自賊。」
『景行録』にいう。「人と怨みを結ぶことを禍を種えるといい、善を捨てて行わないことを自ら害するという。」
44直も丸ごと信じるな
莫信直中直,須防仁不仁。
直の中の直も丸ごと信じるな、仁が仁でないことを防いでおけ。
45盗みの心を常に防げ
常防賊心,莫偷他物。
常に盗みの心を防ぎ、人の物を盗むな。
46片方の言い分だけ聞けば
古人雲:「若聽一面說,便見相離別。」
昔の人がいう。「片方の言い分だけを聞けば、たちまち互いに別れることになる。」
47礼義は足りたところに生じる
禮義生於富足,盜賊起於飢寒。
礼義は富み足りたところに生じ、盗賊は飢えと寒さから起こる。
48驕りと奢りはおのずから至る
貧窮不與下賤,下賤自生。富貴不與驕奢,驕奢而自至。
貧窮は卑しく振る舞わなくても卑しさがおのずから生じ、富貴は驕り奢ろうとしなくても驕りと奢りがおのずから至る。
49満ちれば淫欲、飢えれば盗心
飽暖思淫欲,飢寒起盜心。
腹が満ち暖かければ淫らな欲を思い、飢えて寒ければ盗みの心が起こる。
50貧しかった時を常に思えば
長思貧難危困,自然不驕。每思疾病熬煎,無愁悶。
貧しく難しく危うく困っていた時を長く思えばおのずから驕らず、病んで苦しんだ時を常に思えば愁いも悶えもない。
51法と礼
太公曰:「法不加於君子,禮不責於小人。」
太公がいった。「法は君子には加えず、礼は小人には責めない。」
52君子を重くし小人を罰する
桓範曰:「軒冕以重君子,緘紁以罰小人。」
桓範がいった。「軒と冕によって君子を重くし、縄と綱によって小人を罰する。」
夾注 1
底本は「紁」であるが、縄を意味する字の誤りと見て「縄」と読んだ。――訳者
53礼は君子を、律は小人を防ぐ
《易》曰:「禮防君子,律防小人。」
『易』にいう。「礼は君子を防ぎ、律は小人を防ぐ。」
54吝しさと驕り
《景行錄》曰:「好食色貨利者氣必吝,好功名事業者氣必驕。」
『景行録』にいう。「食と色と財貨と利を好む者は気が必ず吝しく、功名と事業を好む者は気が必ず驕る。」
55君子は義に、小人は利に明らか
子曰:「君子喻於義,小人喻於利。」
孔子がいった。「君子は義に明らかで、小人は利に明らかである。」
56君子が軽んじるもの
《說苑》雲:「財者,君子之所輕。死者,小人之所畏。」
『説苑』にいう。「財は君子が軽んじるものであり、死は小人が畏れるものである。」
57財が多ければ
蘇武曰:「賢人多財則損其志,愚人多財則益其過。」
蘇武がいった。「賢い人は財が多ければその志を損ない、愚かな人は財が多ければその過ちを増す。」
58多く持てば守りを失う
老子曰:「多財失其守正,多學惑於所聞。」
老子がいった。「財が多ければ正しさを守ることを失い、学ぶことが多ければ聞いたことに惑う。」
59堯舜でないのだから
人非堯舜,焉能每事盡善。
人は堯や舜ではないのだから、どうして事ごとにすべて善くできようか。
60孔子より盛んな人はいない
子貢曰:「自生民以來,未有盛於孔子者也。」
子貢がいった。「人が生まれて以来、孔子より盛んな人はいない。」
61貧しければ志が短くなる
人貧志短,福至心靈。
人は貧しければ志が短くなり、福が至れば心が霊(さと)くなる。
62一つを経なければ
不經一事,不長一智。
一つの事を経なければ、一つの知恵が伸びない。
63聞かなければおのずからない
是非終日有,不聽自然無。
是非は一日中あっても、聞かなければおのずからない。
64是非を持ち込む者が是非の人
來說是非者,便是是非人。
来て是非を言う者、それが是非の人である。
65眉をひそめる事をしなければ
《擊壤詩》雲:「平生不作皺眉事,世上應無切齒人。」
『撃壌詩』にいう。「一生、眉をひそめるような事をしなければ、世に歯を噛みしめる人はいないだろう。」
66人がおまえを害したらどうする
你害別人猶自可,別人害你卻何如?
おまえが人を害するのはまだよいとして、人がおまえを害したらそのときはどうするのか。
67悪人は悪人が磨り削る
嫩草怕霜霜怕日,惡人自有惡人磨。
柔らかい草は霜を怖れ、霜は日を怖れる。悪人はおのずから悪人が磨り削ってくれる。
68麝を持てばおのずから香る
有名豈在鏨頑石,路上行人口勝碑。有麝自然香,何必當風立?
名があるのは、どうして硬い石に鑿で刻むことにあろうか。道を行く人の口は碑より勝る。麝を持っていればおのずから香る、どうして風に向かって立つ必要があろうか。
69意があって勢いを得れば
有意得其勢,無風可動搖。
意があってその勢いを得れば、風がなくても揺るがすことができる。
70時が合ってこそ田を作る
得道誇經紀,時熟好種田。
道を得てこそ経営を誇り、時が熟してこそ田を作るのによい。
71道を得た者は助ける人が多い
孟子曰:「得道者多助,失道者寡助。」
孟子がいった。「道を得た者は助ける人が多く、道を失った者は助ける人が少ない。」
72尽くしてはならない
張無擇曰:「事不可做盡,勢不可倚盡。言不可道盡,福不可享盡。」
張無択がいった。「事はやり尽くしてはならず、勢いは頼り尽くしてはならない。言葉は言い尽くしてはならず、福は享け尽くしてはならない。」
73福は惜しみ、勢いは恭しく
有福莫享盡,福盡身貧窮。有勢莫倚盡,勢盡冤相逢。福宜常自惜,勢宜常自恭。人生驕與奢,有始多無終。
福があっても享け尽くすな、福が尽きれば身が貧窮する。勢いがあっても頼り尽くすな、勢いが尽きれば怨みに出会う。福は常に自ら惜しむべきであり、勢いは常に自ら恭しくするべきである。人の世の驕りと奢りは、始めはあっても終わりのないことが多い。
夾注 1
人間勢與福
人の世の勢いと福をいったのである。
74貧しさを侮るな
太公曰:「貧不可欺,富不可勢。陰陽相推,周而復始。」
太公がいった。「貧しいからといって侮ってはならず、富んでいるからといって勢いを振るってはならない。陰と陽は互いに押し合い、めぐってまた始まる。」
75四つを残しておけ
王參政「四留銘」:「留有餘不盡之功,以還造化;留有餘不盡之祿,以還朝廷;留有餘不盡之財,以還百姓;留有餘不盡之福,以遺子孫。」
王参政の「四留銘」である。「余して尽くさない巧みさを残して造化に返し、余して尽くさない禄を残して朝廷に返し、余して尽くさない財を残して百姓に返し、余して尽くさない福を残して子孫に遺せ。」
夾注 1
底本は「功」であるが、通行本の「巧(巧みさ)」に従って読んだ。――訳者
76勢いで交わった間柄
《漢書》雲:「勢交者近,勢竭而亡。財交者密,財盡而疏。色交者親,色衰義絕。」
『漢書』にいう。「勢いで交わった者は近いが、勢いが尽きれば絶える。財で交わった者は密だが、財が尽きれば疎くなる。色で交わった者は親しいが、色が衰えれば義が絶える。」
77度が過ぎれば辱められ疎くなる
子遊曰:「事君數,斯辱矣。朋友數,斯疏矣。」
子游がいった。「君に仕えて度が過ぎれば辱められ、友の間で度が過ぎれば疎くなる。」
夾注 1
孔子的弟子。
孔子の弟子である。
78一言が千金に勝る
黃金千里未為貴,得人一語勝千金。
黄金千両が貴いのではない、人の一言を得るのが千金に勝る。
夾注 1
底本は「千里」であるが、通行本の「千両」に従って読んだ。――訳者
79千金は得やすいが
千金易得,好語難求。
千金は得やすいが、善い言葉は求めがたい。
80善い言葉は得がたい
好言難得,惡語易施。
善い言葉は得がたく、悪い言葉は口にしやすい。
81人に求めるより自分に求めよ
求人不如求己,能管不如能推。
人に求めるのは自分に求めるのに及ばず、よく取り仕切るのはよく人に任せるのに及ばない。
82無用な口出しをすれば
用心閒管是非多。
心を使って無用な口出しをすれば是非が多くなる。
83能ある者は拙い者の召使
能者乃是拙之奴。
能ある者は、つまり拙い者の召使である。
84知る事が少なければ煩悩も少ない
知事少時煩惱少,識人多處是非多。
知る事が少ないときは煩悩も少なく、知る人が多いところには是非も多い。
85小さな舟に重く積むな
小船不堪重載,深徑不宜獨行。
小さな舟は重い積み荷に堪えられず、奥深い小道は独りで行くのによろしくない。
86地を踏むように実に
踏實地,無煩惱。
実の地を踏めば、煩悩がない。
87黄金より安楽
黃金未為貴,安樂值錢多。
黄金が貴いのではない、安らかで楽しいことのほうが値が高い。
88病と苦、安らかさと楽
是病是苦,是安是樂。
病がすなわち苦であり、安らかさがすなわち楽である。
89よこしまな財と悪い言葉
非財害己,惡語傷人。
よこしまな財は自分を害し、悪い言葉は人を傷つける。
90人は財に死に
人為財死,鳥為食亡。
人は財のために死に、鳥は餌のために死ぬ。
91利を独り占めするな
《景行錄》雲:「利可共而不可獨,謀可寡而不可眾。獨利則敗,眾謀則洩。」
『景行録』にいう。「利は共にすべきで独り占めしてはならず、謀は少人数ですべきで大勢でしてはならない。独りで利を占めれば敗れ、大勢で謀れば漏れる。」
92はかりごとが漏れれば禍が先に来る
機不密,禍先發。
はかりごとが密でなければ、禍が先に起こる。
93不孝な者は父母を怨む
不孝怨父母,負債恨財主重刊本作「貧苦恨財主」。。
不孝な者は父母を怨み、借りのある者は貸し主を恨む――重刊本では「貧しさに苦しめば財ある者を恨む」となっている。
94多くを貪れば噛めない
貪多嚼不細,家貧怨鄰有。
多くを貪れば細かく噛めず、家が貧しければ隣に有ることを怨む。
95家で客を迎えられなければ
在家不會迎賓客,出外方知少主人。
家で客を迎えることができなければ、外に出てはじめて主人になってくれる人の少なさを知る。
96金があって客を留めるほうが
但願有錢留客醉,勝如騎馬倚人門。
ただ願うのは、金があって客を留めて酔わせることだ。馬に乗って人の門に寄りかかるのに勝る。
97貧しければ市でも見知られない
貧居鬧市無人識,富在深山有遠親。
貧しければ賑わう市に住んでも見知る人がなく、富んでいれば深い山にいても遠くから訪ねて来る親族がある。
98世の人情は冷暖を見る
世情看冷暖,人面逐高低。
世の人情は冷たさと暖かさを見て動き、人の顔は高さと低さを追って変わる。
99人情は金のある家へ傾く
仁義盡從貧處斷,世情偏向有錢家。
仁と義はみな貧しいところで断たれ、世の人情はひとえに金のある家へ傾く。
100破れていれば侮られる
吃盡千般無人知,衣衫襤褸有人欺欺。
千般のことを飲み尽くしても知る人がなく、衣が破れていれば侮る人がいる。
101底のない穴は塞いでも
寧塞無底坑,難塞鼻下橫。
底のない穴は塞いでも、鼻の下に横たわる口は塞ぎがたい。
102痩せた馬、貧しい人
馬行步慢皆因瘦,人不風流只為貧。
馬の歩みが遅いのはみな痩せているせいであり、人が風流でないのはただ貧しいせいである。
103窮すれば人情が疎くなる
人情皆為窘中疏。
人の情はみな窮まったところで疎くなる。
104先王が酒の禍を避けた法
《禮記》曰:「豢豕為酒,非以為禍也,獄訟益繁,則酒之流生禍也。是故先王因為酒禮,一獻之禮,賓主百拜,終日飲酒而不得醉焉。此先王之所以避酒禍也。」
『礼記』にいう。「豚を飼い酒を作るのは禍にしようとしてではないが、獄や訴えがいよいよ繁くなるのは、酒の流れが禍を生むからである。だから先王はこれによって酒の礼を作り、一献の礼に客と主人が百度拝して、終日酒を飲んでも酔えないようにした。これが先王が酒の禍を避けた所以である。」
105酒は量らずとも乱れには及ばない
《論語》曰:「惟酒無量不及亂。」
『論語』にいう。「ただ酒は量を定めなかったが、乱れるには及ばなかった。」
106酒には成ると敗れるとがある
《史記》曰:「郊天禮廟,非酒不享。君臣朋友,非酒不義。鬥爭相和,非酒不勸。故酒有成敗,而不敢泛飲也。」
『史記』にいう。「天を郊祭し廟に礼するのに、酒がなければ享けられない。君臣や友の間も、酒がなければ義が篤くならない。争った後に互いに和するのも、酒がなければ勧められない。だから酒には成ると敗れるとがあり、みだりに飲んではならないのである。」
107鬼神は敬って遠ざけよ
子曰:「敬鬼神而遠之,可謂智矣。」
孔子がいった。「鬼神は敬いながら遠ざけるなら、知といえる。」
108自分の鬼でないのに祭るのは諂い
非其鬼而祭之,諂也。見義不為,無勇也。
自分の鬼でもないのに祭るのは諂いであり、義を見ながら行わないのは勇がないのである。
109礼仏と念仏と看経と坐禅
禮佛者,敬佛之德;念佛者,感佛之恩;看經者,明經之理;坐禪者,登佛之境;得悟者,證佛之道。
礼仏とは仏の徳を敬うことであり、念仏とは仏の恩に感ずることであり、看経とは経の理を明らかにすることであり、坐禅とは仏の境に登ることであり、悟りを得るとは仏の道を証することである。
110経を見るより方便を行え
看經未為善,作福未為願。莫若當權時,與人行方便。
経を見ることが善となるわけではなく、福を作ることが願となるわけでもない。権を握っているときに、人のために方便を行うに及ばない。
111済顛和尚の警世
濟顛和尚警世:「看盡彌陀經,念徹大悲咒。種瓜還得瓜,種豆還得豆。經咒本慈悲,冤結如何救。照見本來心,做者還他受,自作還自受。」
済顛和尚が世を警めた。「弥陀経を読み尽くし、大悲呪を唱え通しても、瓜を種えれば瓜が得られ、豆を種えれば豆が得られる。経と呪はもともと慈悲だが、結ばれた怨みをどうして救えようか。本来の心を照らし見よ。為した者がそのまま受けるのであり、自ら作って自ら受けるのだ。」
112身を殺して仁を成す
子曰:「志士仁人,無求生以害仁,有殺身以成仁。」
孔子がいった。「志ある士と仁ある人は、生を求めて仁を害することはなく、身を殺して仁を成すことはある。」
113悪い衣と食を恥じるなら
士志於道而恥惡衣惡食者,未足與議也。
士が道に志しながら、悪い衣と悪い食を恥じるなら、ともに議するに足りない。
114公であれば明が生じる
荀子曰:「公生明,偏生暗。端慤生通,作偽生塞。誠信生神,誇誕生惑。」
荀子がいった。「公であれば明が生じ、偏れば暗が生じる。端正で誠実であれば通が生じ、偽りを作れば塞がりが生じる。誠と信は神妙を生み、誇りと偽りは惑いを生む。」
夾注 1
作德
徳を作ることをいう。
115小人のすること
《書》雲:「侮慢自賢,反道敗德,其小人之為也。」
『書経』にいう。「侮り慢り自ら賢いとし、道に反き徳を敗るのは、小人のすることである。」
116妬む友と妬む臣
荀子曰:「士有妬友,則賢友不親。君有妬臣,則賢人不至。」
荀子がいった。「士に妬む友があれば賢い友は親しまず、君に妬む臣があれば賢い人は来ない。」
117佞な臣と佞な妻
太公曰:「治國不用佞臣,治家不用佞婦。好臣是國之寶,好婦是家之珍。」
太公がいった。「国を治めるのに佞な臣を用いず、家を治めるのに佞な妻を用いるな。善い臣は国の宝であり、善い妻は家の珍である。」
118国を乱し家を乱す
諂臣亂國,妬婦亂家。
諂う臣は国を乱し、妬む妻は家を乱す。
119斜めに耕せば良い田を損なう
太公曰:「斜耕敗於良田,諫言敗於善人。」
太公がいった。「斜めに耕せば良い田を損ない、讒言は善い人を損なう。」
120煙突を曲げよといった者に恩沢はない
《漢書》雲:「曲突嘉薪曲突薪:比喻防患於未然。無恩澤,焦頭爛額為上客。」
『漢書』にいう。「煙突を曲げ薪を移せといった者――煙突と薪は患いを未然に防ぐことのたとえである――は恩沢を受けられず、頭を焼き額を焦がした者が上客になる。」
121一日中飾って伏せ寝る
整日梳妝合面睡。
一日中身を飾って、顔を伏せて眠るばかり。
122絵の梁が乾きもしないうちに
畫梁鬥江猶未幹,堂前不見痴心客。
絵を描いた梁の水気がまだ乾きもしないのに、堂の前にあの一途だった客の姿は見えない。
123三寸の息があるうちは
三寸氣在千般用,一旦無常萬事休。
三寸の息があるうちは千般に使うが、ひとたび無常が来れば万事終わりである。
124万物は数を逃れられない
萬物有無常,萬物莫逃乎數。
万物には無常があり、万物は定まった数を逃れられない。
125どんな祥瑞もないほうがまし
萬般祥瑞不如無。
どんな祥瑞も、ないほうがましだ。
126人は天に返すものがない
天有萬物於人,人無一物於天。
天は人に万物を与えたが、人は天に返す一物もない。
127禄のない人は生まれない
天不生無祿之人,地不生無根之草。
天は禄のない人を生まず、地は根のない草を育てない。
128大きな富は天、小さな富は勤め
大富由天,小富由勤。
大きな富は天によるが、小さな富は勤めによる。
129家が成らないと言うな
莫道家未成,成家子未生。莫道家未破,破家子未大。
家がまだ成らないと言うな、家を成す子がまだ生まれていないのだ。家がまだ破れないと言うな、家を破る子がまだ大きくなっていないのだ。
130糞を金のように惜しむ子
成家之兒,惜糞如金。敗家之子,用金如糞。
家を成す子は糞も金のように惜しみ、家を破る子は金も糞のように使う。
131常に足りないところを残しておけ
胡文定公曰:「大抵人家須常教有不足處,若十分快意,提防有不恰好事出。」
胡文定公がいった。「おおよそ人の家には、常に足りないところがあるようにさせよ。十分に思いどおりであれば、思いがけず好ましくない事が出てくるのを防いでおくべきだ。」
132病む前に自ら防げ
康節邵先生曰:「仁者難逢思有常,平生慎勿恃無傷。閒居慎勿說無妨,才說無妨便有妨。爽口物多終作病,快心事過必為殃。爭先徑路機關惡,近後語言滋味長。與其病後能服藥,不若病前能自防。」
康節邵先生がいった。「仁ある人には逢いがたいので常なることを思い、一生、傷がないと頼りにするな。閑に居ても妨げがないと言うな、妨げがないと言ったとたんに妨げが生じる。口に爽やかな物を多く食べればついに病となり、心に快い事が過ぎれば必ず災いとなる。先を争う近道には仕掛けが悪く、後に退いた言葉には味わいが長い。病んだ後に薬を飲めるよりも、病む前に自ら防げるほうがよい。」
133寛さは愚かさではない
饒人不是癡,過後得便宜。
人に寛くするのは愚かではない、過ぎた後に得になる。
134追っても追いつくな
趕人不要趕上,捉賊不如趕賊。
人を追っても追いつこうとするな。盗人は捕らえるより追い払うほうがよい。
135梓潼帝君の訓
梓潼帝君垂訓:「妙藥難治冤債病,橫財不富命窮人。虧心折盡平生福,短天教一世貧。生事事生君莫怨,害人害汝休嗔。天地自然皆有報,遠在兒孫近在身。」
梓潼帝君が訓を垂れた。「妙薬も怨みの負債の病は治しがたく、横財も命の窮まった人を富ませない。心を欠けば一生の福をすべて折り、天を欺けば一世を貧しくさせる。事を起こして事が生じるのをあなたは怨むな、人を害して自分が害されるのに怒るな。天地自然にみな報いがあり、遠くは子や孫に、近くは自分の身にある。」
136薬は死なない病を医す
藥醫不死病,佛度有緣人。
薬は死なない病を医し、仏は縁のある人を度す。
137得をしたところで喜ぶな
吳真人曰:「行短虧心只是貧,莫生巧計弄精神。得便宜處休歡喜,遠在兒孫近在身。」
呉真人がいった。「行いが足らず心を欠くのはただ貧しくなるだけだ、巧みな計略を出して精神を弄ぶな。得をしたところで喜ぶな。報いは遠くは子や孫に、近くは自分の身にある。」
138聡さは半分だけ使え
十分惺惺使五分,留取五分與兒孫。十分惺惺都使盡,後代兒孫不如人。
十分の聡さは五分だけ使い、残りの五分は子や孫に残しておけ。十分の聡さを使い尽くしてしまえば、後の代の子孫が人に及ばなくなる。
139姦しく狡いほど貧しくなる
越姦越狡越貧窮,姦狡原來天不容。富貴若從姦狡得,世間呆漢吸西風。
姦しくなり狡くなるほど貧窮になる。姦と狡はもともと天が容さない。富貴が姦と狡から得られるものなら、世の愚かな男たちは西風でも吸って生きよというのか。
140天の意には厚薄がない
花落花開開又落,錦衣布衣更換。豪家未必長富貴,貧家未必常寂寞。扶人未必上青霄,推人未必填溝壑。勸君凡事莫怨天,天意於人無厚薄。
花は落ち花は開き、開いてまた落ち、錦の衣も布の衣も着替えることになる。豪家が必ず長く富貴であるとは限らず、貧しい家が必ず常に寂しいとは限らない。人を支えても必ず青い空まで上がるとは限らず、人を押しても必ず溝や谷に埋まるとは限らない。あなたに勧める、どんな事にも天を怨むな。天の意は人に厚いも薄いもない。
141役所に出入りするな
莫入州衛與縣衙,勸君勤謹作生涯。池塘積水須防旱,田地勤耕足養家。教子教孫多教藝,栽桑栽柘少栽花。閒是閒非休要管,渴飲清泉悶煮茶。
州の役所や県の役所に出入りするな、あなたに勧める、勤めて慎み生業を立てよ。池に水を溜めて旱に備え、田地をよく耕して家の食を足らせよ。子にも孫にも技を多く教え、桑や柘を植えて花は少なく植えよ。無用な是非には関わるな、渇けば清い泉を飲み、ふさげば茶を煮よ。
142天の眼は車輪のようにめぐる
堪嘆人心毒似蛇,誰知天眼轉如車。去年妄取東鄰物,今日歸北舍家。無義錢財湯潑雪,倘來田水推沙。若將狡諦為生計,正好朝開暮落花。
嘆かわしい、人の心が蛇のように毒であることよ。誰が知ろう、天の眼が車輪のようにめぐることを。去年はみだりに東の隣の物を取ったのに、今日は北の家へ帰ってゆく。義のない金や財貨は熱い湯に注いだ雪であり、思いがけず来た田や水は砂を押し流す波である。狡い偽りを暮らしの計とするなら、ちょうど朝に開いて夕に落ちる花のようなものだ。
143人の心は蛇が象を呑むように
得失榮枯總是天,機關用盡也徒然。人心不足蛇吞象,世事到頭螳螂捕蟬。無藥可醫卿相壽,有錢難買子孫賢。家常守分隨緣過,便是逍遙自在仙。
得失も栄枯もすべて天である、仕掛けを使い尽くしても無駄である。人の心は足るを知らず蛇が象を呑もうとし、世の事は果てに至れば螳螂が蝉を捕らえるのと同じだ。薬で卿相の寿命を医すことはできず、金で子孫の賢さを買うことは難しい。家で常に分を守り、縁に随って過ごせば、それがそのまま逍遥自在の仙人である。
144一日閑であれば一日の仙人
寬性寬懷幾年,人死人生在眼前。隨高隨下隨緣過,或長或短莫埋怨。自有自無休嘆息,家貧家富總由天。平生衣食隨緣度,一日清閒一日仙。
性を寛く懐を寛くして何年生きられよう、人が死に人が生まれるのは目の前にある。高きに随い低きに随い縁に随って過ごし、長かろうと短かろうと怨むな。有るも無いも嘆くな、家の貧しさ富みはすべて天による。一生の衣と食は縁に随って過ごすのだから、一日清らかに閑であれば一日の仙人である。
145花は貧しい家の庭を択ばない
花開不擇貧家地,月照山河到處明。世間只有人心惡,凡事還須天養人。
花は貧しい家の地だからといって咲くのを選ばず、月は山河を照らして至るところ明るい。世には人の心だけが悪いのであり、どんな事もやはり天が人を養うのである。
146真宗皇帝の御製
真宗皇帝御制:「知危識險,終無羅網之門。舉善薦賢,自有安身之路。施恩布德,乃世代之榮昌。懷妬報冤,與子孫之為患。損人利己,終無顯達之雲程。害眾成家,豈有長久富貴。改名異體,皆因巧語而生。禍起傷身,盡是不仁之召。」
真宗皇帝の御製である。「危うさを知り険しさを識れば、ついに羅網にかかる門がない。善い人を挙げ賢い人を薦めれば、おのずから身を安らかにする路がある。恩を施し徳を布くのは、代々の栄えと繁りである。妬みを懐いて怨みに報いるのは、子孫に患いを与えることである。人を損なって自分を利すれば、ついに顕れ達する雲の路がない。衆を害して家を成しても、どうしてその富貴が長く続こうか。名を改め身を変えるようなことは、みな巧みな言葉から生じる。禍が起こって身を傷つけるのは、すべて仁でないことが招いたのである。」
147仁宗皇帝の御製
仁宗皇帝御制:「乾坤宏大,日月照鑑,分明宇宙,寬洪天地,不容姦黨。使心用,果報只在今生。善布淺求,獲福休言後世。千般巧計,不如本分為人;萬種強圖,爭似隨緣節儉。心行慈善,何須努力看經;意欲損人,空讀如來一藏。」
仁宗皇帝の御製である。「乾坤は宏く大きく、日月は明らかに照らし、宇宙は分明で、天地は寛く洪いが、姦しい党は容さない。心を使い計を弄べば、その果報はまさに今生にある。善を布きながら浅く求めるなら、福を得ることを後の世に言うまでもない。千般の巧みな計は、本分のままに人として生きるのに及ばない。万種の無理な図りごとが、どうして縁に随って節しみ倹しむことに及ぼうか。心が慈しみと善を行うなら、努めて経を見る必要がどこにあろう。意が人を損なおうとするなら、如来の一蔵を読み尽くしても空しい。」
148神宗皇帝の御製
神宗皇帝御制:「遠非道之財,戒過度之酒。居必擇鄰,交必擇友。邪妬勿起於心,諫言勿宣於口。骨肉貧者莫疏,他人富者莫厚。克己以勤儉為先,愛眾以謙和為首。常思已往之非,每念未來之咎。若依朕之斯言,治家國而可久。」
神宗皇帝の御製である。「道でない財を遠ざけ、度を過ぎた酒を戒めよ。住むには必ず隣を択び、交わるには必ず友を択べ。邪な妬みを心に起こすな、讒言を口に出すな。骨肉のうち貧しい者を疎んずるな、他人のうち富んだ者を厚くするな。己に克つには勤めと倹しさを先とし、衆を愛するには謙りと和やかさを第一とせよ。常に過ぎ去った非を思い、常に未来の咎を念えよ。もし朕のこの言葉に依れば、家と国を治めることが長く続けられよう。」
149高宗皇帝の御製
高宗皇帝禦制:「一星之火,能燒萬公頃之薪。半句非言,折盡平生之德。身披一縷,常思織女之勞。日食三餐,每念農夫之苦。苟貪新妬,終無十載安康。積善存仁,必有榮華後裔。福緣善慶,多因積德而生。入聖超凡,盡是真實而得。」
高宗皇帝の御製である。「星ほどの一つの火が、万頃の薪を焼くことができる。半句の非なる言葉が、一生の徳をすべて折る。身に一筋の糸をまとうなら、常に織る女の労を思え。日に三度の食をとるなら、常に農夫の苦を念えよ。かりそめに貪り妬めば、ついに十年の安らかさもない。善を積み仁を存すれば、必ず栄えある後の裔がある。福の縁と善い慶びは、多く徳を積むことから生じる。聖に入り凡を超えるのは、すべて真実から得られるのである。」
150老子が孔子を送って
老子送孔子曰:「吾聞富貴者送人以財,仁者送人以言。吾雖不能富貴於人,而竊仁者之號,請送子以言也。曰:聰明深察,反近於死;博辯閔遠,而危其身。」
老子が孔子を送っていった。「私が聞くところでは、富貴な者は人を送るのに財をもってし、仁ある者は人を送るのに言葉をもってするという。私はあなたを富貴にすることはできないが、仁ある者という名をそっと借りて、あなたを言葉で送りたい。いわく――聡明で深く察する人はかえって死に近づき、広く弁じ遠くまで通じる人はその身を危うくする。」
151君を知るには臣を見よ
王良曰:「欲知其君,先視其臣。欲識其人,先視其友。欲知其父,先視其子。君聖臣忠,父慈子孝。」
王良がいった。「その君を知ろうと思うならまずその臣を見、その人を識ろうと思うならまずその友を見、その父を知ろうと思うならまずその子を見よ。君が聖であれば臣は忠であり、父が慈であれば子は孝である。」
152貧しい家に孝子が顕れる
家貧顯孝子,世亂識忠臣。
家が貧しければ孝子が顕れ、世が乱れれば忠臣が識られる。
153水が清すぎれば魚がいない
《家語》雲:「水至清則無魚,人至察則無徒。」
『家語』にいう。「水が至って清ければ魚がおらず、人が至って察すれば従う仲間がいない。」
154匹夫の志は奪えない
子曰:「三軍可奪帥也,匹夫不可奪志也。」
孔子がいった。「三軍からは帥を奪うことができても、匹夫から志を奪うことはできない。」
155生まれながらに知る者が上
生而知之者,上也;學而知之者,次也;困而學之,又其次也;困而不學,民斯為下矣。
生まれながらに知る者が上であり、学んで知る者がその次であり、行き詰まってから学ぶ者がまたその次である。行き詰まっても学ばなければ、民として下となる。
156君子の三つの思い
君子有三思,而不可不知也。少而不學,長無能也。老而不教,死無思也。有而不施,窮無與也。是故君子少思其長則務學,老思其死則務教,有思其窮則務施。
君子には三つの思いがあり、知らずにいてはならない。若くて学ばなければ、大きくなって能がない。老いて教えなければ、死んで思ってくれる者がない。有りながら施さなければ、窮したときに与えてくれる者がない。だから君子は、若いうちは大きくなる日を思って学に務め、老いては死ぬ日を思って教えに務め、有るときは窮する日を思って施しに務める。
157善は難しく悪は易しい
《景行錄》雲:「能自愛者未必能成人,自欺者必罔人。能自儉者未必能週人,自忍者必害人。此無他,為善難,為惡易。」
『景行録』にいう。「自らを愛しむことができる者が必ず人として成るとは限らないが、自らを欺く者は必ず人を欺く。自らを倹しくできる者が必ず人をあまねく助けるとは限らないが、自らに刻(むご)い者は必ず人を害する。これは他でもない、善を行うのは難しく、悪を行うのは易しいからである。」
158富貴な者は善も悪も易しい
富貴者易於為善,其為惡亦不難。
富貴な者は善を行うのが易しく、悪を行うのもまた難しくない。
159求めて得られるものなら
子曰:「富而可求也,雖執鞭之士,吾亦為之。如不可求,從吾所好。」
孔子がいった。「富が求めて得られるものなら、鞭を執る御者の役でも私はやろう。しかし求めて得られるものでないなら、私の好むところに従おう。」
160千巻の詩書と衣と飯
千卷詩書難卻易,一般衣飯易卻難。
千巻の詩書は難しそうでかえって易しく、なみの衣と飯は易しそうでかえって難しい。
161天は禄を絶たない
天無絕人之祿。
天が人の禄を絶つことはない。
162身があれば身の愁いがある
一身還有一身愁。
身一つにはまた身一つ分の愁いがある。
163軽い承諾は信が少ない
輕諾者信必寡,面譽者背必非。
軽々しく承諾する者は信が必ず少なく、顔の前で誉める者は背後で必ず謗る。
164春の雨と秋の月
許敬宗曰:「春雨如膏,滋長萬物,行人惡其泥濘。秋月如鏡,普照萬方,佳人喜其玩賞,盜者惡其照鑑。」
許敬宗がいった。「春の雨は膏のようで万物を育てるが、道を行く人はそのぬかるみを嫌う。秋の月は鏡のようで四方をあまねく照らすが、佳人はそれを賞でるのを喜び、盗む者はその照らすのを嫌う。」
夾注 1
揚輝
光を揚げるという意味である。
165名と節を泰山のように
《景行錄》雲:「大丈夫見善明,故重名節於泰山;用心剛,故輕死生如鴻毛。」
『景行録』にいう。「大丈夫は善を見ることが明らかなので、名と節を泰山より重く思い、心の用いようが剛いので、死と生を鴻の毛より軽く思う。」
166断が先である
外事無小大,中欲無淺深。有斷則生,無斷則死。大丈夫以斷為先。
外の事に大小はなく、内の欲に浅深はない。断があれば生き、断がなければ死ぬ。大丈夫は断を先とする。
167知っていて行わないのなら
子曰:「知而弗為,不如勿知。親而弗信,莫如勿親。樂而方至,樂而勿驕。患之所至,思而勿憂。」
孔子がいった。「知っていて行わないのなら、知らないほうがよい。親しんでいて信じないのなら、親しまないほうがよい。楽しみがまさに至ったなら、楽しんでも驕るな。患いが至ったなら、思いめぐらしても憂いに沈むな。」
168勢いに乗るのに及ばない
孟子曰:「雖有智慧,不如乘勢。雖有鎡基,不如待時。」
孟子がいった。「知恵があっても勢いに乗るのに及ばず、鋤や鍬があっても時を待つのに及ばない。」
169呂氏の郷約
《呂氏鄉約》雲:「德業相勸,過失相規,禮俗相成,患難相卹。」
『呂氏郷約』にいう。「徳と業は互いに勧め、過ちと失は互いに正し、礼と俗は互いに成し、患いと難は互いに恤れめ。」
170人の危急を救え
憫人之兇,樂人之善,濟人之急,救人之危。
人の凶を憐れみ、人の善を喜び、人の急を救い、人の危うさを救え。
171目で見た事さえ真かと恐れるのに
經目之事猶恐未真,背後之言豈足深信。
目で経た事さえまだ真でないかと恐れるのに、背後の言葉をどうして深く信じられようか。
172牛は自分の力を知らない
人不知己過,牛不知力大。
人は自分の過ちを知らず、牛は自分の力が強いことを知らない。
173自分の縄の短さは恨まず
不恨自家麻繩短,只怨他家古井深。
自分の家の麻縄が短いことは恨まず、ただ他の家の古井戸が深いことを怨む。
174まぐれで脱れても
僥脫,無辜報。
まぐれで脱れることはあっても、罪のない者が報いを受けることはない。
夾注 1
底本は「僥脫,無辜報」で字が落ちているようなので、「まぐれで脱れることはあっても、罪のない者が報いを受けることはない」と読んだ。――訳者
175贓物が天下に溢れても
贓物濫滿天下,罪拘福薄人。
贓物が天下に溢れても、罪は福の薄い人ばかりにかかる。
176人の心は鉄、官の法は炉
人心似鐵,官法如爐。
人の心は鉄のようで、官の法は炉のようだ。
177人の心は満たしがたい
太公曰:「人心難滿,溪壑易盈。」
太公がいった。「人の心は満たしがたく、谷は満たしやすい。」
178天が常を改めれば
天若改常,不風即雨。人若改常,不病即死。
天が常を改めれば、風でなければ雨である。人が常を改めれば、病でなければ死である。
179国が正しければ天の心も順う
《狀元詩》雲:「國正天心順,官清民自安。妻賢夫禍少,子孝父心寬。」
『状元詩』にいう。「国が正しければ天の心も順い、官が清ければ民はおのずから安らかである。妻が賢ければ夫の禍が少なく、子が孝であれば父の心が寛い。」
180仁でなければ保てない
孟子雲:「三代之得天下也以仁,其失天下也以不仁。國之所以廢興存亡者亦然。天子不仁,不保四海;諸侯不仁,不保社稷;卿大夫不仁,不保宗廟;庶人不仁,不保四體。今惡死亡而樂不仁,是猶惡醉而強酒。」
孟子がいう。「三代が天下を得たのは仁によってであり、天下を失ったのは不仁によってである。国が廃れ興り存し亡ぶ理由もまたそうである。天子が仁でなければ四海を保てず、諸侯が仁でなければ社稷を保てず、卿大夫が仁でなければ宗廟を保てず、庶人が仁でなければ自分の身を保てない。いま死と亡びを嫌いながら不仁を楽しむのは、酔うのを嫌いながら無理に酒を飲むのと同じである。」
181はじめて俑を作った者
子曰:「始作俑者,其無後乎?」
孔子がいった。「はじめて俑(ひとがた)を作った者は、後の世継ぎがないであろう。」
182墨縄に従えば直くなる
木從繩則直,君從諫則聖。
木は墨縄に従えば直くなり、君は諫めに従えば聖となる。
183夢のようで泡のようなのだから
佛經雲:「一切有為法,如夢幻泡影,如露亦如電,應作如是觀。」
仏経にいう。「一切の有為の法は、夢のようで幻のようで泡のようで影のようであり、露のようでまた電のようである。まさにこのように観るべきである。」
184収める人は後にもいる
一派青山景色幽,前人田土後人收。後人收得莫歡喜,更有收人在後頭。
ひとすじの青い山の景色が幽かで、前の人の田土を後の人が収める。後の人は収めたからといって喜ぶな。収める人がさらに後にいる。
185理由もなく得た千金
蘇東坡雲:「無故而得千金,不有大福,必有大禍。」
蘇東坡がいう。「理由もなく千金を得たなら、大きな福があるのではなく、必ず大きな禍がある。」
186禍の端
《景行錄》雲:「大筵宴不可屢集,金石文字不可輕為,皆禍之端。」
『景行録』にいう。「大きな宴は度々集ってはならず、金や石に刻む文字は軽々しく作ってはならない。どちらも禍の端である。」
187まず道具を鋭くせよ
子曰:「工欲善其事,必先利其器。」
孔子がいった。「工が自分の仕事を善くしようとするなら、必ずまずその器を鋭くする。」
188来も去もしなければ
爭似不來還不往,無歡喜也無愁。
来ることもなく去ることもないのに及ぼうか、喜びもなく愁いもないのだから。
189何が禍で何が福か
康節邵先生曰:「有人來問卜,如何是禍福。我虧人是禍,人虧我是福。」
康節邵先生がいった。「ある人が来て占いを問い、何が禍と福かといった――私が人を欠けばそれが禍であり、人が私を欠けばそれが福だと答えた。」
190千間の家でも臥すのは八尺
大廈千間,夜臥八尺。良田萬公頃,日食二公升。
大きな家が千間あっても、夜に臥す場所は八尺であり、良い田が万頃あっても、一日に食べるのは二升だけである。
191神明はもともと正直である
不孝諦燒千束紙,虧心枉焚萬爐香。神明本是正直做,豈受人間枉法贓物?
不孝でありながら紙を千束焼いたところで何になろう。心を欠きながら香を万炉むなしく焚いたところで何になろう。神明はもともと正直に作られているのだから、どうして人の世の法を枉げた賄賂を受けようか。
192長く留まれば賤しくなる
久住令人賤,貧來親也疏。但看三五日,相見不如初。
長く留まれば人が賤しくなり、貧しくなれば親族も疎くなる。たった三日五日置いて見るだけでも、互いに向かい合うのは初めほどではない。
193渇いたときの一滴
渴時一滴如甘露,醉後添杯不如無。
渇いたときの一滴は甘露のようであり、酔った後に加える杯はないほうがましだ。
194酒が人を酔わせるのではない
酒不醉人人自醉,色不迷人人自迷。
酒が人を酔わせるのではなく人が自ら酔い、色が人を迷わせるのではなく人が自ら迷う。
195仁と富
孟子曰:「為仁不富矣,為富不仁矣。」
孟子がいった。「仁を行えば富めず、富を行えば仁でなくなる。」
196徳を色のように好む人
子曰:「已矣乎!吾未見好德如好色者也。」
孔子がいった。「おしまいだ。私は徳を好むことを色を好むようにする者を見たことがない。」
197公心が私心ほどであれば
公心若比私心,何事不辨?道念若同情念,成佛多時。
公の心が私の心ほどであれば、どんな事が弁ぜられないだろう。道への念が情への念と同じであれば、仏を成してからもう久しいだろう。
198執着する者
老子曰:「執著之者,不明道德。」
老子がいった。「執着する者は道徳に明らかでない。」
199過ぎてはじめて誤りと知る
過後方知前事錯,老來方覺少時餘。
過ぎた後にはじめて前の事が誤りだったと知り、老いてはじめて若い時に余裕があったと気づく。
200君子は道徳を楽しむ
楊雄曰:「君子修身,樂其道德。小人無度,樂聞其譽。修德日益,智慮日滿。」
揚雄がいった。「君子は身を修めてその道徳を楽しみ、小人は度がなくて自分の誉れを聞くのを楽しむ。徳を修めれば日に増し、知慮が日に満ちる。」
201屏風は破れても骨組みは残る
子曰:「君子高則卑而謙,小人寵則倚勢驕奢。小人見淺易盈,君子見深難溢。故屏風雖破,骨格猶存;君子雖貧,禮義常在。」
孔子がいった。「君子は高くなれば低くして謙り、小人は寵を受ければ勢いに倚って驕り奢る。小人は見るところが浅くて満ちやすく、君子は見るところが深くて溢れにくい。だから屏風は破れても骨組みは残り、君子は貧しくても礼義は常にある。」
202諫める臣、諫める子
《家語》曰:「國之將興,實在諫臣。家之將榮,必有詔子。」
『家語』にいう。「国が興ろうとするときは、まことに諫める臣にかかっている。家が栄えようとするときは、必ず諫める子がある。」
203命を知らなければ君子になれない
子曰:「不知命,無以為君子也。不知禮,無以立也。不知言,無以知人也。」
孔子がいった。「命を知らなければ君子となれず、礼を知らなければ立てず、言葉を知らなければ人を知ることができない。」
204徳のある者には必ず言葉がある
《論語》雲:「有德者必有言,有言者不必有德。」
『論語』にいう。「徳のある者は必ず言葉があるが、言葉のある者が必ず徳があるとは限らない。」
205拙い者が吉である
濂溪周先生曰:「巧者言,拙者默。巧者勞,拙者逸。巧者賊,拙者德。巧者兇,拙者吉。天下拙,刑政徹。上安下順,風清弊絕。」
濂溪周先生(周敦頤)がいった。「巧みな者は言い、拙い者は黙る。巧みな者は労し、拙い者は逸する。巧みな者は害し、拙い者は徳を持つ。巧みな者は凶で、拙い者は吉である。天下が拙ければ、刑と政が明らかになり、上は安らかで下は順い、風俗は清く弊はなくなる。」
206山が高ければ雲と雨が起こる
《說苑》雲:「山致其高,雲雨起焉。水致其深,蛟龍生焉。君子致其道,福祿存焉。」
『説苑』にいう。「山がその高さを致せば雲と雨が起こり、水がその深さを致せば蛟や龍が生じ、君子がその道を致せば福と禄が留まる。」
207徳が薄いのに位ばかり高ければ
《易》曰:「德微而位尊,智小而謀大,無禍者鮮矣。」
『易』にいう。「徳が薄いのに位が尊く、知が小さいのに謀が大きければ、禍のない者はまれである。」
208位が尊ければ危うさを防げ
荀子曰:「位尊則防危,任重則防廢,擅寵則防辱。」
荀子がいった。「位が尊ければ危うさを防ぎ、任が重ければ廃れることを防ぎ、寵を独りにしていれば辱めを防げ。」
209自ら侮った後に人が侮る
子曰:「夫人必自侮,然後人侮。家必自毀,而後人毀之。國必自伐,而後人伐之。」
孔子がいった。「およそ人は必ず自ら侮った後に人が侮り、家は必ず自ら毀した後に人が毀し、国は必ず自ら伐った後に人が伐つ。」
210初めのように終わりを慎め
《說苑》雲:「官怠於宦成,病加於小愈。禍生於懈惰,孝衰於妻子。察此四者,慎終如始。」
『説苑』にいう。「官は官位が成るときに怠り、病は少し癒えるときに加わる。禍は懈りと惰りから生じ、孝は妻子によって衰える。この四つを察して、初めのように終わりを慎めよ。」
211何によって見ようか
子曰:「居上不寬,為禮不敬,臨喪不哀,吾何以觀之哉?」
孔子がいった。「上に居て寛からず、礼を行って敬わず、喪に臨んで哀しまないなら、私は何によってその人を見ようか。」
212君子と野人
孟子曰:「無君子莫治野人,無野人莫養君子。」
孟子がいった。「君子がいなければ野人を治められず、野人がいなければ君子を養えない。」
213六親が和やかでなければ
老子曰:「六親不和不慈孝,國家昏亂無忠臣。」
老子がいった。「六親が和やかでないので慈と孝が生じ、国家が昏く乱れるので忠臣が生じる。」
214慈しみ深い父も不孝な子は愛さない
《家語》雲:「慈父不愛不孝之子,明君不納無益之臣。」
『家語』にいう。「慈しみ深い父も不孝な子は愛さず、明らかな君も益のない臣は納めない。」
夾注 1
即《孔子家語》,原書27卷。今本10卷,系三國魏王肅蒐集和偽造。
すなわち『孔子家語』である。もとは二十七巻で、今伝わる十巻は三国時代の魏の王肅が集め、作り足したものである。
215奴は金で買えても子は
奴須用錢買,子須破腹生。
奴は金を使って買うものだが、子は腹を破って生むものだ。
216破れてもあなたの衣
著破是君衣,死了是君妻。
破れてもあなたの衣であり、死んでもあなたの妻である。
217他人の貧しさを笑うな
莫笑他家貧,輪回事公道。莫笑他人老,終須還到我。
他の家の貧しさを笑うな、めぐりめぐるのは公の道理だ。他の人の老いを笑うな、ついには自分にも回って来る。
218水の少ないところの魚のように
是日以過,命亦隨減,如少水魚,於斯何樂?
この日が過ぎてしまえば命もそれにつれて減る。水の少ないところの魚のようだ。ここに何の楽しみがあろうか。
219器が満ちれば溢れる
《景行錄》雲:「器滿則溢,人滿則喪。」
『景行録』にいう。「器が満ちれば溢れ、人が満ちれば失う。」
220衆の口は調えがたい
羔羊雖美,眾口難調。
羊の肉がどんなに美味でも、衆の口をすべて調えるのは難しい。
221一尺の璧は宝ではない
尺璧非寶,寸陰是競。
一尺の璧は宝ではない、一寸の光陰を争うべきだ。
222金玉は食べも着もできない
《漢書》雲:「金玉者,飢不可食,寒不可衣,自古以穀帛為貴也。」
『漢書』にいう。「金や玉は、飢えても食べられず、寒くても着られないので、古くから穀と帛を貴いとした。」
223白い玉は泥に投げても
《益智書》雲:「白玉投於泥,不能污濕其色。君子行於濁地,不能染亂其心。故松柏可以奈雪霜,明智可以涉艱危。」
『益智書』にいう。「白い玉は泥に投げてもその色を汚すことはできず、君子は濁った地を行ってもその心を染め乱すことはできない。だから松や柏は雪と霜に耐えることができ、明らかな知は艱しさと危うさを渡ることができる。」
夾注 1
耐
「奈」は「耐(たえる)」と同じである。
224仁でない者は
子曰:「不仁者,不可以久處約,不可以長處樂。」
孔子がいった。「仁でない者は、窮まった境に長く処ることができず、楽しみにも長く処ることができない。」
225求めなければどこでもよい
無求到處人情好,不飲從他酒價高。
求めることがなければ行くところどこでも人情がよく、飲まなければ酒の値が上がろうと勝手にさせておける。
226虎を捕らえるより口を開くのが難しい
入山擒虎易,開口告人難。
山に入って虎を捕らえるのは易しいが、口を開いて人に頼むのは難しい。
227人の和がいちばん
孟子曰:「天時不如地利,地利不如人和。」
孟子がいった。「天の時は地の利に及ばず、地の利は人の和に及ばない。」
228遠い水は近い火を救えない
遠水難救近火,遠親不如近鄰。
遠い水は近い火を救いがたく、遠い親族は近い隣に及ばない。
229慎む家に横禍は入らない
太公曰:「日月雖明,不照覆盆之下。刀劍雖快,不斬無罪之人。非災橫禍,不入慎家之門。」
太公がいった。「日と月がどんなに明るくても、伏せた盆の下は照らせない。刀や剣がどんなに切れても、罪のない人は斬れない。思いがけない災いや横禍は、慎む家の門には入らない。」
230誉め讃えから福が生じる
讚歎福生,作念禍生,煩惱病生。
誉め讃えるところから福が生じ、よくない念いから禍が生じ、煩悩から病が生じる。
231国が清ければ才子が貴い
國清才子貴,家富小兒驕。
国が清ければ才子が貴ばれ、家が富めば小さい子が驕る。
232福は気づかず禍はすぐ気づく
得福不知,禍來便覺。
福を得たときは気づかないのに、禍が来ればすぐ気づく。
233万頃の田より薄い技
太公曰:「良田萬公頃,不如薄藝隨身。」
太公がいった。「良い田が万頃あっても、身についた薄い技に及ばない。」
234清い貧しさが濁った富みに勝る
《週禮》雲:「清貧常樂,濁富多憂。」
『周礼』にいう。「清い貧しさは常に楽しく、濁った富みは憂いが多い。」
235何であれ和やかであればよい
房屋不在高堂,不漏好。衣服不在綾羅,和暖便好。飲食不在珍饈,一飽好。娶妻不在顏色,賢德便好。鄰裡不在高低,和睦便好。親眷不擇新舊,來往好。養兒不問男女,孝順便好。兄弟不在多少,和順便好。朋友不在酒食,扶持好。官吏不在大小,清正便好。
家は高い堂にあるのではなく、漏らなければよい。衣服は綾や羅にあるのではなく、暖かければよい。飲食は珍しい膳にあるのではなく、一度腹が満ちればよい。妻を娶るのは顔色にあるのではなく、賢く徳があればよい。隣里は高いか低いかにあるのではなく、和睦すればよい。親族は新しいか古いかを択ばず、行き来があればよい。子を養うのは男か女かを問わず、孝順であればよい。兄弟は多いか少ないかにあるのではなく、和順であればよい。友は酒と食にあるのではなく、支えてくれればよい。官吏は大きいか小さいかにあるのではなく、清く正しければよい。
236道清和尚の警世
道清和尚警世:「善事雖好做,無心近不得。你若做好事,別人分不得。經典積如山,無緣無故看不得。忤逆不孝順,天地容不得。王法鎮乾坤,犯了饒不得。良田千萬公頃,死來用不得。靈前好供養,起來吃不得。錢財過壁堆,臨行將不得。命運不相助,卻也強不得。兒孫雖滿堂,死來替不得。」
道清和尚が世を警めた。「善い事はするのがよいけれども、心がなければ近づけない。あなたが善い事をすれば、他人が分け取ることはできない。経典が山のように積まれていても、縁がなければ見ることができない。逆らって孝順でなければ、天と地が容さない。王法が乾坤を鎮めているので、犯せば許されない。良い田が千万頃あっても、死んでしまえば使えない。霊前の立派な供養も、起きて食べることはできない。金や財貨が壁を越えるほど積まれても、去るときに持って行けない。命運が助けてくれなければ、無理にすることもできない。子や孫が堂に満ちていても、死を代わってもらうことはできない。」
237まず人の道を修めよ
欲修仙道先修人道,人道不能修,仙道遠矣。
仙の道を修めようと思うなら、まず人の道を修めよ。人の道を修められなければ、仙の道は遠い。
238一生道を譲っても
孝友朱先生曰:「終身讓路,不枉百步。終身讓畔,不失一段。」
孝友朱先生がいった。「終身、道を譲っても百歩を回り道することにならず、終身、畔を譲っても一区画を失うことにならない。」
239窮まれば偽る
顏子曰:「鳥窮則啄,獸窮則攫,人窮則詐,馬窮則跌。」
顔子がいった。「鳥は窮まれば啄み、獣は窮まれば掴みかかり、人は窮まれば偽り、馬は窮まれば躓く。」
240何気なく挿した柳が陰を成す
著意栽花花不發,無心插柳柳成陰。
気を入れて植えた花は咲かず、何気なく挿した柳が陰を成した。
241子を教えるほうがよい
《景行錄》雲:「廣積不如教子,避禍不如省非。」
『景行録』にいう。「広く積むのは子を教えるのに及ばず、禍を避けるのは非を省くのに及ばない。」
242病めば金が急になる
病有工夫急有錢。
病めば手当てする暇があり、急なときには金があるようにせよ。
243易しく得れば易しく失う
得之易,失之易;得之難,失之難。
易しく得れば易しく失い、難しく得れば難しく失う。
244目を開いて食べる汁
寧吃開眼湯,莫吃皺眉糧。
むしろ目を開いて食べる汁を食べても、眉をひそめながら与えられる糧は食べるな。
245一筋の衣に織女の労を
桓範曰:「若服一縷,憶織女之勞;若食一粒,思農夫之苦。學而不勤不知道,耕而不勤不得食。怠則親者成疏,敬則疏者成親矣。」
桓範がいった。「一筋の糸を着るなら織る女の労を憶い、一粒を食べるなら農夫の苦を思え。学んで勤めなければ道を知らず、耕して勤めなければ食を得られない。怠れば親しい者も疎くなり、敬えば疎い者も親しくなる。」
246自分が欲しないことは人にも
《性理書》雲:「接物之要:己所不欲,勿施於人;行有不得,反求諸己。」
『性理書』にいう。「物に接する要はこうである。自分が欲しないことを人に施すな。行って得られないことがあれば、かえって自分に求めよ。」
247酒色財気の四面の牆
酒色財氣四面牆,多少賢愚在內廂。若有世人跳得出,便是神仙不死方。
酒と色と財と気の四面の牆の内に、どれほど多くの賢い者愚かな者がその廂に入っているか。世の人がここから跳び出せたなら、それがそのまま神仙の死なない方(しょほう)である。
248無常が来るのも知らずに
人生智未生,智生人易老。心智一切生,不覺無常到。
人が生まれたとき知はまだ生じておらず、知が生じるころ人はもう老いやすい。心と知があらゆるものを生み出しても、無常が至ることには気づかない。