いにしえの文 › 奥の細道(奥州へ向かう細道の記) › 全一巻

白河の関白河の關

奥の細道(奥州へ向かう細道の記) 奥の細道 · 松尾芭蕉 · 元禄15年(1702年)刊 · 1689年の旅 · 段落 1 · 漢字 159字 · 朗読 0.4分

奥の細道(奥州へ向かう細道の記) 全一巻 「月日は百代の過客であり、行き交う年もまた旅人です」 — 芭蕉が四十六歳で江戸を離れ、奥州と北陸を五か月かけて歩いた紀行文。夏草に武士たちの夢を見、岩にしみ入る蝉の声を聞き、一つ屋根の下に眠る遊女を萩と月に見立てる。散文が終わるところごとに俳句が一句置かれる。法顕・玄奘・慧超の求法記と並ぶ、この書斎のもう一つの道である。

1白河の関 — ここで旅の心が定まった

心もとなき日數かさなるまゝに白川のせきにかゝりて旅心定りぬいかで都へと便り求めしもことわりや中にも此關は三關の一にして風騷の人心をとゝむ秋風を耳にのこし紅葉を俤にして靑葉の梢猶哀なり卯花の白妙に茨の花の咲そひて雪にもこゆる心地そする古人冠を正し衣裝を改めし事など淸輔の筆にとゞめ置れしとぞ 卯花をかざしに關の晴着哉曾良

落ち着かない日数が重なるうちに白河の関にかかり、そこで初めて旅の心が定まりました。「どうにかして都へ知らせたい」と便りを求めたという昔の人の心も、もっともなことです。

なかでもこの関は三関の一つで、詩歌を好む人が心を留めてきた所です。「秋風」を耳に残し、「紅葉」を面影に思いながら見る青葉の梢が、かえって心にしみます。卯の花の白さに茨の花が咲き添って、雪の中を越えるような気持ちがします。昔の人が冠を正し、衣裳を改めたことなどを、清輔が筆に留めておかれたということです。

卯の花をかざして / 関を越える晴れ着とします — 曾良

夾注 1

裳ノ誤也

「衣裝」の「裝」は「裳」の誤りです。