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しのぶの里

奥の細道(奥州へ向かう細道の記) 奥の細道 · 松尾芭蕉 · 元禄15年(1702年)刊 · 1689年の旅 · 段落 1 · 漢字 131字 · 朗読 0.3分

奥の細道(奥州へ向かう細道の記) 全一巻 「月日は百代の過客であり、行き交う年もまた旅人です」 — 芭蕉が四十六歳で江戸を離れ、奥州と北陸を五か月かけて歩いた紀行文。夏草に武士たちの夢を見、岩にしみ入る蝉の声を聞き、一つ屋根の下に眠る遊女を萩と月に見立てる。散文が終わるところごとに俳句が一句置かれる。法顕・玄奘・慧超の求法記と並ぶ、この書斎のもう一つの道である。

1忍の里の文字摺の石

明れはしのぶもぢ摺の石をたづねて忍の里に行く遙山陰の小里に石なかば土に埋れてあり里のわらべの來て敎へけるむかしは此山の上に侍りしを往來の人の麥艸をあらして此石を試み侍るをにくみて此谷につき落せば石の面下さまにふしたりさもあるべき事にや 早苗とる手もとや昔忍ぶずり

夜が明けると、しのぶ文字摺の石を訪ねて忍の里へ行きました。遥かな山陰の小さな里に、石が半ば土に埋もれてありました。里の子どもが来て教えてくれたところでは、昔はこの山の上にあったのを、行き来する人が麦草を荒らしてこの石を試すのを憎んで、この谷に突き落としたので、石の面が下向きに伏せてしまったということです。さもありそうなことでしょうか。

早苗を取る / 手もとよ 昔の忍ぶ摺り

夾注 1

一本ふしたりといふトアリ

異本には「ふしたりといふ」とあります。