海外北経海外北經
海外自東北陬至西北陬者。
海外の、東北の隅から西北の隅に至るものである。
無啓之國在長股東,為人無啓。
無啓国は長股の東にある。その人々は後を継がない。
鍾山之神名曰燭陰,視為晝,瞑為夜,吹為冬,呼為夏,不飲,不食,不息,息為風,身長千里。在無啓之東。其為物,人面,蛇身,赤色,居鍾山下。
鍾山の神は燭陰という。目を開けば昼となり、閉じれば夜となる。吹けば冬となり、吐けば夏となる。飲まず、食わず、息をしない。息をすれば風となる。身の長さは千里である。無啓の東にある。その姿は、顔が人で身が蛇、色は赤い。鍾山の下に住む。
一目國在其東,一目中其面而居。
一目国はその東にある。目が一つ、その顔の真ん中にあって暮らしている。
夾注 1
一作:一目中其面而居。一曰有手足
「目が一つその顔の真ん中にある」と記すものもあり、「手と足がある」と記すものもある。
柔利國在一目東,為人一手一足,反厀,曲足居上。一云留利之國,人足反折。
柔利国は一目の東にある。その人々は手が一本で足が一本、膝が逆に曲がり、曲がった足が上を向いている。一説に、留利国といい、人の足が逆に折れているという。
共工之臣曰相柳氏,九首,以食于九山。相柳之所抵,厥為澤谿。禹殺相柳,其血腥,不可以樹五穀種。禹厥之,三仞三沮,乃以為眾帝之臺。在昆侖之北,柔利之東。相柳者,九首人面,蛇身而青。不敢北射,畏共工之臺。臺在其東,臺四方,隅有一蛇,虎色,首衝南方。
共工の臣を相柳氏という。頭が九つあり、九つの山で食べた。相柳が触れた所は沼や谷となった。禹が相柳を殺すと、その血が臭くて五穀の種を植えることができなかった。禹はその地を掘ったが、三仞掘ると三たび崩れた。そこでそれを多くの帝の台とした。崑崙の北、柔利の東にある。相柳というものは、頭が九つで顔が人、身が蛇で青い。あえて北に向けて矢を射ない。共工の台を畏れるからである。台はその東にあり、四角で、隅にそれぞれ一匹の蛇がいて、虎の色をしており、頭が南を向いている。
深目國在其東,為人深目,舉一手,一曰在共工臺東。
深目国はその東にある。その人々は目が深く、片手を挙げている。一説に、共工の台の東にあるという。
夾注 1
一作:為人舉一手一目,在共工臺東
「その人々は片手と片目を挙げており、共工の台の東にある」と記すものもある。
無腸之國在深目東,其為人長而無腸。
無腸国は深目の東にある。その人々は背が高くて腸がない。
聶耳之國在無腸國東,使兩文虎,為人兩手聶其耳。縣居海水中,及水所出入奇物。兩虎在其東。
聶耳国は無腸国の東にある。二匹の模様のある虎を使い、その人々は両手でその耳を押さえている。海水の中に吊り下がるように住み、水の出入りする所の珍しいものに及ぶ。二匹の虎がその東にある。
夸父與日逐走,入日。渴,欲得飲,飲於河、渭,河、渭不足,北飲大澤。未至,道渴而死。棄其杖,化為鄧林。
夸父は日と駆けくらべをして、日に追いついた。喉が渇いて飲み物を得ようとし、黄河と渭水で飲んだが、黄河と渭水では足りず、北へ大沼の水を飲みに行った。着く前に、道で渇いて死んだ。その杖を捨てると、鄧林となった。
夸父國在聶耳東,其為人大,右手操青蛇,左手操黃蛇。鄧林在其東,二樹木。一曰博父。
夸父国は聶耳の東にある。その人々は大きく、右手に青い蛇を持ち、左手に黄色い蛇を持っている。鄧林はその東にあり、二本の木である。一説に、博父という。
禹所積石之山在其東,河水所入。
禹が石を積んだ山がその東にあり、黄河が流れ込む所である。
拘癭之國在其東,一手把癭。一曰利癭之國。
拘癭国はその東にある。片手で瘤をつかんでいる。一説に、利癭国という。
尋木長千里,在拘癭南,生河上西北。
尋木は長さが千里で、拘癭の南にある。黄河のほとりの西北に生える。
跂踵國在拘癭南,其為人兩足皆支。一曰反踵。
跂踵国は拘癭の南にある。その人々は両足がどちらも分かれている。一説に、反踵という。
夾注 1
一作:其為人大,兩足亦大
「その人々は大きく、両足も大きい」と記すものもある。
歐絲之野在反踵東,一女子跪據樹歐絲。
歐絲の野は反踵の東にある。一人の女が膝をついて木に寄りかかり、糸を吐いている。
三桑無枝,在歐絲東,其木長百仞,無枝。
三本の桑には枝がなく、歐絲の東にある。その木は長さが百仞で、枝がない。
范林方三百里,在三桑東,洲環其下。
方三百里の范林が三本の桑の東にあり、砂州がその下を取り巻いている。
務隅之山,帝顓頊葬于陽。九嬪葬于陰。一曰爰有熊、羆、文虎、離朱、𩿨久、視肉。
務隅の山で、帝顓頊はその南に葬られ、九人の妃はその北に葬られた。一説に、ここには熊、羆、文虎、離朱、𩿨久、視肉がいるという。
平丘在三桑東,爰有遺玉、青鳥、視肉、楊柳、甘柤、甘華,百果所生。有兩山夾上谷,二大丘居中,名曰平丘。
平丘は三本の桑の東にある。ここには遺玉、青い鳥、視肉、柳、甘柤、甘華があり、あらゆる果実の生じる所である。二つの山が上の谷を挟み、二つの大きな丘がその中にあって、名を平丘という。
北海內有獸,其狀如馬,名曰騊駼。有獸焉,其名曰駮,狀如白馬,鋸牙,食虎豹。有素獸焉,狀如馬,名曰蛩蛩。有青獸焉,狀如虎,名曰羅羅。
北海の内に獣がいて、その姿は馬のようで、名を騊駼という。そこに獣がいて、その名を駮といい、姿は白い馬のようで、鋸のような歯があり、虎や豹を食う。白い獣がいて、姿は馬のようで、名を蛩蛩という。青い獣がいて、姿は虎のようで、名を羅羅という。
北方禺彊,人面鳥身,珥兩青蛇。踐兩青蛇。
北方の禺彊は、顔が人で身が鳥、二匹の青い蛇を耳に掛け、二匹の青い蛇を踏んでいる。