海内北経海內北經
海內西北陬以東者。
海内の、西北の隅から東に至るものである。
匈奴、開題之國、列人之國並在西北。貳負之臣曰危,危與貳負殺窫窳,帝乃梏之疏屬之山,桎其右足,反縛兩手,繫之山上木。在開題西北。
匈奴、開題国、列人国は、みな西北にある。貳負の臣を危という。危は貳負とともに窫窳を殺した。帝はそこで彼を疏属の山につなぎ、その右足に足かせをはめ、両手を後ろで縛って、山の上の木に結びつけた。開題の西北にある。
有人曰大行伯,把戈。其東有犬封國。貳負之尸在大行伯東。
大行伯という人がいて、戈を持っている。その東に犬封国がある。貳負の屍が大行伯の東にある。
犬封國曰犬戎國,狀如犬。有一女子,方跪進柸食。有文馬,縞身朱鬛,目若黃金,名曰吉量,乘之壽千歲。
犬封国は犬戎国ともいい、姿が犬のようである。一人の女がいて、ちょうど膝をついて杯と食べ物を差し出している。模様のある馬がいて、身が白く、たてがみが赤く、目が黄金のようである。名を吉量といい、これに乗れば千歳を生きる。
鬼國在貳負之尸北,為物人面而一目。一曰貳負神在其東,為物人面蛇身。蜪犬如犬,青,食人從首始。
鬼国は貳負の屍の北にある。その姿は顔が人で目が一つである。一説に、貳負の神がその東にあり、その姿は顔が人で身が蛇だという。蜪犬は犬のようで青く、人を食べるのに頭から始める。
窮奇狀如虎,有翼,食人從首始,所食被髮,在蜪犬北。一曰從足。
窮奇は姿が虎のようで、翼がある。人を食べるのに頭から始め、食べられる者は髪を振り乱す。蜪犬の北にある。一説に、足から始めるという。
帝堯臺、帝嚳臺、帝丹朱臺、帝舜臺,各二臺,臺四方,在昆侖東北。
帝堯の台、帝嚳の台、帝丹朱の台、帝舜の台は、それぞれ二つずつで、台は四角で、崑崙の東北にある。
大蠭其狀如螽。朱蛾其狀如蛾。
大きな蜂は、その姿がいなごのようである。赤い蟻は、その姿が蛾のようである。
蟜,其為人虎文,脛有𦜹。在窮奇東。一曰,狀如人。昆侖虛北所有。
蟜は、その人が虎の模様で、脛にふくらはぎがある。窮奇の東にある。一説に、姿が人のようだという。崑崙虚の北にあるものである。
闒非,人面而獸身,青色。
闒非は、顔が人で身が獣、色は青い。
據比之尸,其為人折頸被髮,無一手。
據比の屍は、その人が首が折れて髪を振り乱し、片手がない。
環狗,其為人獸首人身。一曰蝟狀如狗,黃色。
環狗は、その人が頭が獣で身が人である。一説に、はりねずみで、姿が犬のようで黄色いという。
𥘯,其為物人身黑首從目。
𥘯は、その姿が身は人で頭が黒く、目が縦についている。
戎,其為人人首三角。
戎は、その人が頭が人で角が三つある。
林氏國有珍獸,大若虎,五采畢具,尾長于身,名曰騶吾,乘之日行千里。
林氏国に珍しい獣がいて、大きさは虎ほどで、五つの色をすべて備えている。尾が身より長く、名を騶吾という。これに乗れば一日に千里を行く。
昆侖虛南所,有氾林方三百里。
崑崙虚の南の所に、方三百里の氾林がある。
從極之淵深三百仞,維冰夷恒都焉。冰夷人面,乘兩龍。一曰忠極之淵。
從極の淵は深さが三百仞で、ただ冰夷が常にそこに居る。冰夷は顔が人で、二匹の龍に乗る。一説に、忠極の淵という。
陽汙之山,河出其中;淩門之山,河出其中。
陽汙の山で、黄河がその中から出る。淩門の山で、黄河がその中から出る。
王子夜之尸,兩手、兩股、胷、首、齒,皆斷異處。
王子夜の屍は、両手、両股、胸、首、歯が、みな切られて別々の所に置かれている。
大澤方百里,羣鳥所生及所解,在鴈門北。
方百里の大きな沼があり、多くの鳥が生まれ、羽の生え替わる所である。鴈門の北にある。
鴈門山,鴈出其閒。在高柳北。
鴈門山で、雁がその間から出る。高柳の北にある。
高柳在代北。
高柳は代の北にある。
舜妻登比氏生宵明、燭光,處河大澤,二女之靈能照此所方百里。一曰登北氏。
舜の妻の登比氏が宵明と燭光を生み、黄河の大きな沼に住んだ。二人の娘の霊力は、この所、方百里を照らすことができた。一説に、登北氏という。
東胡在大澤東。
東胡は大きな沼の東にある。
夷人在東胡東。
夷人は東胡の東にある。
貊國在漢水東北。地近于燕,滅之。
貊国は漢水の東北にある。土地が燕に近く、燕がこれを滅ぼした。
孟鳥在貊國東北,其鳥文赤、黃、青,東鄉。
孟鳥は貊国の東北にある。その鳥は模様が赤、黄、青で、東を向いている。