胡蜜国胡蜜國
1今日は千筋の涙
又從吐火羅國。東行七日。至胡蜜王住城。當來於吐火羅國。逢漢使入蕃。略題四韻取辭。五言君恨西蕃遠。余嗟東路長。道荒宏雪嶺。險澗賊途倡。鳥飛驚峭嶷。人去偏樑。雖平生不捫淚。今日灑千行。冬日在吐火羅逢雪述懷。五言冷雪牽氷合。寒風擘地烈。巨海凍墁壇。江河凌崖囓。龍門絕瀑布。井口盤蛇結。伴火上𮌑歌。焉能度播蜜此胡蜜王。兵馬少弱。不能自護。見屬大𥦽所管。每年輸稅絹三千疋。住居山谷。處所狹小。百姓貧多。衣著皮裘氈衫。王著綾絹疊布。食唯餅𩚙土地極寒。甚於餘國。言音與諸國不同。所出羊牛。極小不大。亦有馬騾。有僧有寺。行小乘法。王及首領百姓等。總事佛。不歸外道。所以此國無外道。男並剪除鬚髮。女人在頭。住居山裏。其山無有樹水及於百草。
また吐火羅国から東へ七日行くと、胡蜜の王が住む城に至る。
先に吐火羅国に来たとき、西蕃へ入る漢の使いに出会い、四韻をおおよそ記して別れを告げた。五言の詩である。
あなたは西蕃への道が遠いと嘆き 私は東への道が長いと嘆く。 道は荒れて雪の嶺ははるかに広く 険しい谷には盗賊がはびこる。 飛ぶ鳥も切り立った峰に驚き 人は傾いた丸木橋をやっと渡る。 生涯涙をぬぐったことはないのに 今日は千筋の涙を流している。
冬の日に吐火羅で雪に出会い、思いを述べた。五言の詩である。
冷たい雪は氷まで引き寄せて凝り 寒い風は地を裂くほど激しい。 大海は凍って壇を広げたようで 川の水は崖を削り取る。 竜門では滝さえ絶え 井戸の口には蟠る蛇のように氷が結ぶ。 火を友として階を上り歌ってみるが どうしてあの播蜜を越えられようか。
この胡蜜の王は兵馬が少なく弱くて、自ら守ることができない。今は大寔の管轄に属して、毎年絹三千疋を税として納める。山の谷に住んで場所が狭く小さく、民は貧しい者が多い。衣は革の皮衣とフェルトの単衣を着て、王は綾と絹と毛織りの布を着る。食べ物は餅と麦粉だけである。土地がひじょうに寒く、ほかの国よりも厳しい。言葉もほかの国々と同じでない。出る羊と牛はごく小さくて大きくない。馬と騾馬もいる。
僧もいて寺もあり、小乗の法を行う。王と首領と民たちはみな仏を祀って外道に帰さないので、この国には外道がいない。男はみな髭と髪を剃り、女は髪を伸ばす。山の中に住むが、その山には木も水もさまざまな草もない。
夾注 3
⿰肉亥
「肉」のそばに「亥」を書いた字である。
⿱穴是
「穴」の下に「是」を書いた字である。
⿰飠少
「食」のそばに「少」を書いた字である。