薩他泥湿伐羅国薩他泥濕伐羅國
薩他泥濕伐羅國周七千餘里。國大都城周二十餘里。土地沃壤,稼穡滋盛。氣序溫暑,風俗澆薄,家室富饒,競為奢侈。深閑幻術,高尚異能。多逐利,少務農,諸方奇貨多聚其國。伽藍三所,僧徒七百餘人,並皆習學小乘法教。天祠百餘所,異道甚多。
薩他泥湿伐羅国は周囲七千余里である。国の大都城は周囲二十余里である。土地は肥え、種まきと収穫がよく育って盛んである。気候は温かく暑く、風俗は薄情である。家々は富み豊かで、競って奢りをきそう。幻術に深く通じ、人並みでない能力を高く尊ぶ。利を追う者が多く、農に励む者は少なく、諸方の珍しい品がその国に多く集まる。伽藍は三か所、僧は七百余人で、みな小乗の法と教えを学び修めている。天祠は百余か所、外道がはなはだ多い。
2福の地と呼ばれるようになったわけ
大城四周二百里內,彼土之人謂為福地。聞諸先志曰:昔五印度國二王分治,境壤相侵,干戈不息。兩主合謀,欲決兵戰,以定雌雄,以寧氓俗。黎庶胥怨,莫從君命。王以為眾庶者難與慮始也,神可動物,權可立功。時有梵志素知高才,密賫束帛,命入後庭,造作法書,藏諸巖穴。歲月既久,樹皆合拱。王於朝坐,告諸臣曰:「吾以不德,忝居大位,天帝垂照,夢賜靈書,今在某山,藏於某嶺。」於是下令營求,得書山林之下。群官稱慶,眾庶悅豫,宣示遠近,咸使聞知。其大略曰:「夫生死無涯,流轉無極,含靈淪溺,莫由自濟。我以奇謀,令離諸苦。今此王城周二百里,古先帝世福利之地。歲月極遠,銘記湮滅,生靈不悟,遂濃苦海。溺而不救,夫何謂歟?汝諸含識,臨敵兵死,得生人中,多殺無辜,受天福樂,順孫孝子,扶侍親老,經遊此地,獲福無窮。功少福多,如何失利?一喪人身,三途冥漠。是故含生,各務修業!」於是人皆兵戰,視死如歸。王遂下令,招募勇烈,兩國合戰,積屍如莽。迄於今時,遺骸遍野。時既古昔,人骸偉大。國俗相傳,謂之福地。
大城の四方二百里の内を、その地の人は福の地という。古い記録に聞くところではこうである。昔、五インドの国を二人の王が分けて治めていたが、境を侵し合って戦いが絶えなかった。二人の君主はともにはかり、兵を交えて決着をつけ、優劣を定めて民を安んじようとした。しかし民はみな怨んで君の命に従わなかった。王は、民衆とは事の初めをともにはかりがたいが、神しいものは人を動かすことができ、方便は功を立てることができると考えた。そのとき、才の高さで知られた梵志がいたので、ひそかに絹を与え、後庭に入るよう命じて法書を作らせ、岩穴に隠させた。歳月が久しくなって、木はみな一抱えになった。王は朝廷の座で臣下たちに告げた。「私は徳がないのに、はばかりながら大位にある。天帝が照らし見られ、夢に神しい書を賜った。いまそれは某の山にあり、某の峰に隠されている。」そこで令を下して探させると、山林の下からその書を得た。官たちは慶事と称え、民は喜んだので、遠近に広く示してみな聞き知らせた。その大略にはこうあった。「生死には果てがなく、流転には極まりがなく、霊を含むものは沈み溺れて、みずから渡るすべがない。私は奇抜なはかりごとによって、もろもろの苦を離れさせよう。いま、この王城の周囲二百里は、古い先の帝の世に福と利のあった地である。歳月がきわめて遠く、刻み記したものが消え失せたので、生あるものは悟らず、ついに苦の海に沈んだ。溺れているのに救わないでは、何と言えよう。お前たち識を含むものよ、敵に臨んで戦い死ねば人の中に生まれ、罪のない者を多く殺しても天の福楽を受け、従順な孫や孝ある子が老いた親を扶け侍り、この地を通り過ぎて遊べば、得る福はきわまりない。功は少なく福は多いのに、どうしてその利を失うのか。ひとたび人の身を失えば、三途は暗く果てしない。それゆえ生あるものよ、おのおの業を修めるに努めよ。」そこで人々はみな戦いに出て、死を帰るようにみなした。王はついに令を下して勇ましく激しい者を募り、二つの国が合い戦って、積もる屍は草むらのようであった。いまに至るまで、残った骨が野に広がっている。時がすでに昔であるから、人の骨は大きい。国の風俗に言い伝えて、これを福の地という。
3無憂王の塔
城西北四五里,有窣堵波,高二百餘尺,無憂王之所建也。磚皆黃赤色,甚光凈,中有如來舍利一升,光明時照,神跡多端。
城の西北四、五里に窣堵波があり、高さは二百余尺、無憂王が建てたものである。煉瓦はみな黄と赤の色で、はなはだ光り清らかである。中に如来の舎利が一升あって、明るい光がときおり照り、神しい跡がさまざまに現れる。
4俱昏荼の伽藍
城南行百餘里,至俱昏荼僧伽藍。重閣連甍,層臺間峙。僧徒清肅,威儀閑雅。
城から南へ百余里行くと、俱昏荼の僧伽藍に至る。重なる楼閣が棟を連ね、層を成す台が間に高くそびえている。僧は清く厳かで、威儀はしとやかである。
夾注 1
去聲。
去声である。
從此東北行四百餘里,至窣祿勤那國。
ここから東北へ四百余里行くと、窣禄勤那国に至る。
夾注 1
中印度境。
中インドの境である。